2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18540322
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小栗 章 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10204166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 裕規 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (60373239)
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Keywords | 量子ドット / メゾスコピック系 / 近藤効果 / ジョセフソン効果 / 強相関電子系 / 数値くりこみ群 / 非平衡量子輸送 / アンドレーエフ散乱 |
Research Abstract |
電子間の相互作用は、量子ドット、量子細線などの輸送現象に多彩なバリエーションを与える。我々は、様々な状況の中で起こる近藤効果に関連する現象の研究を進めている。近藤効果は、平均して奇数個の電子が量子ドットを占有する場合、高温では電子間の斥力のため量子ドットに局所磁気モーメントが現れ、このモーメントが低温では伝導電子との混成により低温でsinglet対を形成し遮蔽されることにより起こるが、低温の性質を系統的に調べるには高度な理論計算が必要とされる。 我々は研究の第1点目として、2個の超伝導金属に挟まれた量子ドット系の低エネルギーの性質をWilsonの数値くりこみ群を用いて精密に調べた。この系では、超伝導ギャップと近藤効果の競合により、基底状態は磁気モーメントを持つ場合と遮蔽される場合があり、転移がおこると量子ドット通過するJosephson電流の向きが変わるなど興味深い振る舞いを示す。我々は、トンネル接合の非対称性が基底状態の転移に大きな影響を与えることを見出し、基底状態の性質を対称性の観点から総合的に論じ論文にまとめた。論文は、近々New Journal Physics誌へ掲載される。また、我々は超伝導-ドット-常伝導系におけるAndreev散乱と近藤効果に関した詳細な計算も行った、興味深い結論が得られた。論文は現在、投稿中である。 研究の第2点目として、非線系応答領域の量子ドットに適用可能な非摂動的アプローチを開発し、非平衡状態における近藤効果の詳細を明らかにすることを目指している。非平衡状態の定式化にはKeldyshのGreen法が知られている。この方法は、摂動的な計算には有効であるが、非摂動的な拡張は難しい。我々は、非平衡定常を記述する密度行列から出発し、量子ドットと結合しない伝導電子の自由度に関するHilbert空間の部分和を解析的に実行することに成功し、Phys.Rev.誌に発表した。
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