2006 Fiscal Year Annual Research Report
STM/STSから見た高温超伝導体のチェッカーボード型電荷秩序と擬ギャップ
Project/Area Number |
18540332
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
桃野 直樹 北海道大学, 大学院理学研究院, 助手 (00261280)
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Keywords | 高温超伝導体 / 走査トンネル顕微鏡 / 電荷秩序 / 擬ギャップ / Bi2212 |
Research Abstract |
本年度、様々なホール濃度のビスマス系高温超伝導体(Bi2212)において走査トンネル顕微鏡・分光実験(STM/STS)を行った。その結果、チェッカーボード型電荷秩序が観測される試料ではトンネルスペクトルはいわゆるゼロ温度擬ギャップ(Zero Temperature Pseudogap : ZTPG)となるが、ゼロバイアス付近ではZTPGのスペクトル形状がd波超伝導ギャップとほぼ一致することが分かった。d波超伝導体ではゼロバイアス付近のトンネルスペクトルはフェルミ面の(π/2,π/2)付近(ノード付近)のギャップ構造を反映するため、この結果はチェッカーボード型電荷秩序が発現していてもフェルミ面のノード付近の電子状態は超伝導となることを意味する。一方、フェルミ面の(π,0)付近(アンチノード付近)を反映するギャップ端付近では、ZTPGはd波超伝導ギャップと大きく異なっており、チェッカーボード型電荷秩序はアンチノード付近の電子によってもたらされていると考えられる。これらの結果から、チェッカーボード型電荷秩序とd波超伝導は運動量空間の異なる場所で発現し、実空間では共存していると考えられる。また、これまで我々は超伝導凝集エネルギーの測定から、擬ギャップが高温から発達するアンチノード付近の電子状態は超伝導の発現に寄与しないことを報告してきたが、上記のSTM/STSの結果はこの超伝導凝集エネルギーの結果とも符合する。また、本年度は温度可変型STM装置の開発・テストも行った。試行実験では、液体ヘリウム温度から40K付近まで温度を連続的に変化させながらグラファイトの原子像を観測することに成功した。
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