2007 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性の破れた超伝導における新奇物性と強相関効果
Project/Area Number |
18540347
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 聡 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (10263063)
|
Keywords | 超伝導 / 磁性 / 強相関電子系 / 重い電子系 / 空間反転対称性 |
Research Abstract |
(1)空間反転対称性の破れた超伝導体CePt3Siでは、最近、良質単結晶の作成が進歩し、新たな実験データが蓄積されつつある。それによるとこの系の単結晶では一般的に、空間反転対称性の破れの向きが逆方向の双晶ドメインが形成されている可能性が高いことが示唆されている。このようなドメインが存在すると超伝導物性に著しい影響を及ぼすと考えられる。このような観点から我々は、ドメイン間のジョセフソン接合を考慮したモデルにもとづく超伝導状態の計算を行った。その結果、ドメイン上では、零エネルギー束縛状態が形成され、さらにドメイン上では通常の超伝導体のように磁束量子が整数でなく、任意の端数の値を取りえる特異な渦糸状態が実現されることが明らかになった。また、この端数渦糸の存在は、クーパー対がs波とp波対の混合した状態であることと密接に関わっており、このような端数渦糸の実験的観測がクーパー対のパリティ混合の実験的検証となり得ることも指摘された。双晶界面における端数渦糸の存在は、磁束のダイナミックスに著しい影響を及ぼす。flux creepの観測等によって、この特異な渦糸状態が観測されることが議論された。本研究結果の論文は現在投稿中である。 (2)量子1次元スピン系の不純物効果に関する研究を行った。量子1次元スピン系に非磁性不純物が導入されると、1次元鎖が2つに分断され、それぞれが開いた境界をもつ半無限系として扱うことができる。このような系は空間反転対称性を破っており、磁性に対するこの効果が現れるれいでもある。我々は、場の理論等の解析的手法とモンテカルロ等の数値計算の手法を組み合わせて、低エネルギーでの非磁性不純物による量子スピン揺らぎへの影響をほぼ定量的に厳密に調べることに成功した。
|