2008 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性の破れた超伝導における新奇物性と強相関効果
Project/Area Number |
18540347
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤本 聡 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 准教授 (10263063)
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Keywords | 超伝導 / 重い電子系 / 電子相関 / 空間反転対称性 / 臨界磁場 |
Research Abstract |
空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi3, CeIrSi3の超伝導発現機構の解明と巨大上部臨界磁場の起源の解明を行った。これらの超伝導体は圧力下で反強磁性臨界点近傍において超伝導を示すが、その起源が反強磁性揺らぎによって媒介される引力であることを微視的なモデル計算によって示した。また、これらの系では超伝導転移温度が僅か1K程度であるにもかかわらず、上部臨界磁場が30Tを越えるほど巨大である。この巨大な上部臨界磁場の起源の解明は興味深い問題であったが、我々はこれを解決することに成功した。我々の理論によると、磁気量子臨界点近傍に於ける引力の爆発的増大による強結合効果と、空間反転対称性の破れに起因するパウリ対破壊効果の抑制が、このような巨大上部臨界磁場を生み出しているということが明らかになった。我々は、磁場による超伝導の軌道対破壊効果、パウリ対破壊効果、そして、反強磁性ゆらぎによる電子の非弾性散乱がもたらす対破壊効果を同時に考慮した強結合超伝導理論を展開し、実験結果をよく再現する臨界磁場を得ることに成功した。また、これらの系の実験によると上部臨界磁場の圧力依存性も興味深い振る舞いを示している。印加されている圧力がある値に近づくと、零磁場での超伝導転移温度は小さい変化しか示さないのに対して、上部臨界磁場は急激に圧力とともに増大する。この振る舞いも我々の理論計算でよく再現されることが明らかにされた。我々の研究結果は、これらの系における超伝導が反強磁性揺らぎを媒介する引力によって実現していることを確立するものである。
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