2006 Fiscal Year Annual Research Report
モンテカルロ法による複雑なスピン系の動的・静的臨界現象の研究
Project/Area Number |
18540379
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡部 豊 首都大学東京, 大学院理工学研究科, 教授 (60125515)
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Keywords | モンテカルロ法 / XYモデル / クロックモデル / 希釈 / 双対性 / 非平衡 / ナノ磁性体 / Langevin方程式 |
Research Abstract |
本研究の目的は、新しいモンテカルロアルゴリズムを用いて、これまで困難とされてきたランダム系、フラストレート系、非平衡定常状態転移などの問題に取り組むと共に、さらに有効なモンテカルロアルゴリズムを開発することにある。本年度の主な研究成果を示す。 1.希釈ランダムスピン系における双対性:2次元XYモデル、あるいはそれを離散化したクロックモデルは、Kosterlitz-Thouless(KT)転移を示すことが知られている。既に希釈と共に浸透閾値でKT転移が連続的に消失することを示したが、Villain型の相互作用の場合に成り立つ双対性が希釈系でどのような情報を与えるかに注目した。クラスターフリップを用いた精度の高いモンテカルロ法を用いて、クロックモデルの示す2つのKT転移温度を求め、両者の間に双対関係式が成り立っか調べた。その結果、双対関係式は極めてよい近似になっているが、厳密ではない可能性が高いと結論された。2.非平衡reweighting法の応用:平衡系のモンテカルロ法で成功を収めているreweighting法を非平衡系に拡張することを最近提案した。本年は非平衡reweighting法の効率よい計算を行うため、マルチスピンコーディングの手法が適用できることを示した。3.ナノ磁性体のダイナミックス:ナノ磁性体を念頭において、磁性体のダイナミックスを記述するLangevinタイプの方程式とモンテカルロ法の関係を議論した。Langevinタイプの取り扱いは長時間の緩和ダイナミックスを記述することが難しいが、一方、単純なモンテカルロ法には時間スケールが実時間と対応していないという問題がある。本研究では両者の欠点を補い合う、一般的な手法を議論した。ドリフト項と拡散項をマッチさせることにより、モンテカルロ法に現れる時間と実時間との関係付ける因子と際差運動のステップを求めた。実際に、単粒子の場合と磁性体の集合体の場合にこの方法の有効性を示した。
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