2007 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡条件下におけるハミルトン系カオスのエルゴード論的構造と輸送現象
Project/Area Number |
18540383
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
相澤 洋二 Waseda University, 理工学術院, 教授 (70088855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮口 智成 北海道大学, 電子科学研究所, 研究員 (10367071)
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Keywords | 量子ダイナミクス / マスター方程式 / デコヒーレンス / 場の量子論 / 階層性 |
Research Abstract |
統計力学の基礎となるハミルトン系のエルゴード問題は、従来ほとんどの研究が孤立系に対して向けられて来た。本研究では、非平衝条件下における輸送・緩和現象の背後にあるエルゴード性の探求を行う。 今年度は次の2つのテーマについて取り組んだ; (I)長時間記憶を生み出すSRB測度の構造と再投入(リインジェクション)機構の解明 (II)定常熱伝導状態におけるゆらぎ定理の確認とリヤプノフスペクトル分布の決定 (I)では、KAMトーラス近傍の淀み運動を記述する写像力学系を用いてSRB測度が長時間記憶(相関関数のべき的減衰)をもたらす再投入機構(reinjection)を理論的に明らかにし、共鳴効果をレゾルベンド法によって厳密に導くことができた。これはリュービル測度をもつ一般のハミルトン系のLong Tail出現条件を理論的に明確に示した最初の結果である。現在は、この結果を基礎にして自由度の大きい系のアーノルド拡散に対する再投入機構の解明に進んでいる。 (II)では、格子振動系と剛体分子系の熱伝導に対してゆらぎ定理(Fluctuation Theorem)が成立することを確認するととともに、線形応答領域から非線形応答領域への移行をエントロピー生成の分布関数のキュムラント展開理論によって明確に示した。また、熱浴の温度(温度差は一定)を下げることによって、従来のゆらぎ定理が破綻する領域を見出すことに成功した。これは、当初我々が予想したとおり弱い非平衝条件の下でアーノルド拡散が残存することを示すもので、双曲的カオス理論を基礎にして理論化されたゆらぎ定理とは異なる新しいゆらぎ定理を導出できる可能性が出てきた。現在、(I)のアーノルド拡散の再投入機構の理論計算と合わせて、大規模シミュレーションによるリヤプノフ指数分布関数の局所的(空間依存性の)ゆらぎ定理の導出に取りかかっている。
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Research Products
(22 results)