2007 Fiscal Year Annual Research Report
南極氷床に刻みこまれた超新星爆発の痕跡探査とその解析
Project/Area Number |
18549002
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
五十嵐 誠 The Institute of Physical and Chemical Research, 牧島宇宙放射線研究室, 協力研究員 (50435624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 優子 独立行政法人理化学研究所, 櫻井RI物理研究室, 仁科センター研究員 (90332246)
高橋 和也 独立行政法人理化学研究所, RI製造応用チーム, 先任研究員 (70221356)
中井 陽一 独立行政法人理化学研究所, 櫻井RI物理研究室, 専任研究員 (30260194)
本山 秀明 国立極地研究所, 研究教育系, 教授 (20210099)
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Keywords | 堆積年代 / イオン濃度分析 / 氷床コア / 南極 / ドームふじ / 火山噴火 |
Research Abstract |
今年度の研究実施計画では、当初、南極ドームふじ基地において掘削された氷床コアの96m以深について測定試料の新規作成と、精度の高い氷床コアの堆積年代(深度と年代との関係)の推定を行うことを計画した。しかし研究を進行するにつれ、既存のドームふじ氷床コアの年代軸では、年代の不定性が大きく、本研究の目的である超新星爆発起源のイオン濃度スパイクの年代の同定を行うためには、より精度の良い、新しい年代軸の重要性が明らかになった。このため途中より計画を変更し、より信頼のおける氷床コア堆積年代の構築に重きをおくこととした。 現在までのドームふじ氷床コアの年代軸は、氷表面の直流電気伝導度測定(ECM)において検出された顕著なスパイクを、それぞれ既知の火山の噴火年代と対応させて作成したものであった。しかしECM測定では、火山起源物質以外のあらゆる不純物イオンによってもスパイクが形成され得るため、スパイクの判別に不確定性が残る。さらにドームふじ氷床コアでは、直近の過去2000年間において火山起源と判別できるECMスパイクがわずか4つしか検出されていなかったため、年代推定の不定性が非常に大きかった。そこで、本研究では、火山噴出物中に大量に含まれる硫黄酸化物が氷中に保存された硫酸イオンを直接、高時間分解能で測定し、濃度プロファイル上に現れたスパイクを火山学から求められている大規模火山噴火の記録リストと照合する方法で年代軸作成を進めた。その結果、過去850年間において、ECMより同定された2つの火山起源スパイクの他に、新たに11個の硫酸イオンスパイクを火山起源と判別することが出来、年代が知られている大規模火山噴火と対応づけることができた。この成果により、氷床コア堆積年代の精度はECMより求めた堆積年代より格段に向上することが見込まれ、現在、研究論文としてとりまとめているところである。
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