2007 Fiscal Year Annual Research Report
二重群論の新しい理論的手法を用いた励起三重項スピン状態の解明
Project/Area Number |
18550021
|
Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
安積 徹 Akita International University, 国際教養学部, 教授 (90013490)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 陽一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30004500)
喜多村 昇 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50134838)
山内 清語 東北大学, 多元物質研究所, 教授 (10127152)
|
Keywords | モリブデン / レニウム / 金属錯体 / クラスター / 三重項状態 / スピン副準位 / 二重群論 / Gaussian 03 |
Research Abstract |
以前、安積は、本研究の共同研究者である佐々木教授と共同で、モリブデンの六核錯体の三重項状態からの燐光を観測・解析し、発光は、三重項状態がスピン軌道相互作用で分裂した3つのスピン副準位からの発光の重ね合わせによるものと解釈した。その後、モリブデンをレニウムに変えただけのレニウム錯体について、外国の研究者によって研究されたが、彼らによって与えられた解釈は、スピン副準位をまったく考慮していないばかりか、奇異な解釈としか思われないものであった。そこで、この問題を、理論と実験の両面から解明することが目的であった。 実験面は、主として北海道大学の喜多村教授および佐々木教授と研究室との共同で行われた。モリブデン錯体およびレニウム錯体ともに、新規な化合物を数多く合成し、また、測定も、結晶状態、ポリマーマトリックスに埋め込んだ固体溶液状態など広範囲に、また測定温度を更に極低温(約2K)まで拡張した。 一方、理論面は、主として安積により、二重群論の立場から、以前構築した理論を再検討しながら更に発展させた。 理論と実験の結果を総合的に判断した結果、観測したすべてのモリブデン錯体およびレニウム錯体について、発光は、スピン軌道相互作用によって数個のスピン副準位に分裂した状態の発光が重なったものであることが、疑いの余地なくはっきりとした。また、分裂した4つのスピン副準位のうち、低エネルギー側の3つのスピン副準位が主として発光に寄与すること、および、最低のスピン副準位が対称性低下のためにわずかに分裂していることなど、多くの新しい知見が得られた。更に、分裂の大きさおよびそれぞれの発光の懸垂速度定数、発光スペクトルのピーク値などの分光学的定数をすべて求め、理論的に解析した。 これら一連の研究によって、モリブデンやレニウムの六核錯体の電子状態の全貌が明らかになった。
|
Research Products
(6 results)