2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ空間制御された新規スピンクロスオーバー相の創成
Project/Area Number |
18550055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川田 知 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教授 (10211864)
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Keywords | スピンクロスオーバー / 鉄二価イオン / ヘリケート |
Research Abstract |
bpypzと鉄二価イオンが作る多核錯体を用いてナノ空間制御されたスピン状態の動的、静的制御を検討した。鉄:bpypz=1:1で形成する平面型二核錯体はスピンクロスオーバーを示すが、軸配位子の選択によりその転移温度、共同性を制御することが可能であることを見いだした。特に、軸位にビピリジンが配位し二核錯体が架橋された一次元錯体においては非常に大きな共同性が見られ、次元性制御が鉄-鉄間の共同性に大きな影響を与えることが明らかになった。一方、鉄:bpypz=5:6で形成されるヘリケート状五核錯体は、スピン状態が異なる二つのFe(II)サイトを有することを見いだした。すなわち、ヘリケート中央部にある酸素架橋三核クラスター部分[Fe_3O]^<4+>が高スピン、その上下に存在する鉄イオンが低スピンであった。なお、本研究以外に[Fe_3O]^<4+>クラスターが単離された例はなく、このような単純な錯体系において、不安定なクラスターが安定にトラップできることは錯体の反応性の点からも興味深い。さらに、五核ヘリケートのCVを測定したところ、多段階の酸化還元波を示した。X線結晶構造解析およびメスバウアースペクトルから、ヘリケートは、上下のトリス体ユニット([Fe^<11>(bpypz)_3]^-)のFe(II)とFe_3O^<4+>コア中に環境の異なる二種類のFe(II)を有することが明らかになっており、多段階の酸化還元はヘリケート構造を反映しているものと考えられる。また、銅イオンを用いた場合も同様に[Cu^<11>(bpypz)_3]^-ユニットとCu_3O^<4+>コアからなるCu^<11>五核ヘリケート錯体を形成することが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)