Research Abstract |
油潤滑下における炭素繊維強化PEEK複合材料の焼付き特性をすべり速度10〜20m/sの高速下で調べた.使用潤滑油は無添加タービン油(ISOVG46,滴下潤滑)で,ブロックオンリング型摩擦摩耗試験機を用いて実験を行った.リング及びブロック材料として,各々鍛鋼SF540A, PEEK複合材料の2種類を使用し,実験した材料の組合せは4種類である.実験は,1N/sの荷重速度で焼付きが発生するまで荷重を増加させる荷重増加試験(荷重0〜1177N)と一定荷重試験(荷重一定:294,588,882,1177N)の2通りの方法で行った.摩耗面及び発生した摩耗粒子は光学顕微鏡及びSEMで観察し,EDSで分析した.また,潤滑油中に含まれる摩耗粒子のSOAP分析も行った.以下に得られた結果を示す. (1)荷重増加試験では,SF540Aリングと複合材料ブロックの組合せがすべり速度19m/sでも焼付かず,最も耐焼付き性に優れていることが分かった.他の組合せにおいては,すべり速度15m/sでも焼付きを生じ,焼付きへの材料依存性が明らかになった.また,荷重増加試験では実験が比較的短時間なので摩擦面があまり高温にならず,そのために焼付きが起こりにくい.荷重増加試験は樹脂材料の焼付き評価試験としては好ましくないといえる. (2)一定荷重試験では,SF540Aリングと複合材料ブロックの組合せにおいても,すべり速度15m/sでは荷重1177N以上,19m/sでは荷重882N以上で焼付きを生じた.このように一定荷重試験では高速ほど低荷重で焼付くことが分かった.これは,一定荷重試験では摩擦係数が一定でもリング温度が安定せず増加するためで,複合材料の摩擦挙動(焼付き)は摩擦面温度に強く依存することがわかった.すなわち,リング温度が約100℃を超えると流体潤滑から混合潤滑へ,180〜190℃を超えると焼付きに遷移することが明らかになった. (3)熱重量分析や熱機械分析から,複合材料のガラス転移温度は140℃,熱軟化温度は340℃,熱分解温度は600℃であることが分かった.摩耗面では,激しい凝着破断と溶融の痕跡が観察され,摩耗粒子も表面層の溶融に起因して発生したと思われる摩耗粒子が観察された.従って,焼付き発生時の複合材料表面は熱軟化温度340℃を越えていることが予想される.
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