Research Abstract |
本研究の目的は,近年急速な進歩を遂げているロボット技術の応用として,滑り雪氷路面での転倒メカニズムを明らかにし,高齢者の歩行姿勢や動作を想定した安全な歩行動作の提案と,寒冷地仕様の歩行アシスト装置・器具の開発のための基礎的知見を得ることであった.予備実験で確認した,3次元モーションキャプチャーによる五指マニピュレータの動作分析手法および16bitマイコンを用いた計測と制御技術の研究成果により,その有効性が認められた我々の提案する改良型計算トルク法をベースとして,滑り面環境下における歩行に必要なロボティクス技術に関する有効性を確認した.平成20年度は,転倒回避のために現実的に見合う歩行動作を提案することができた. それは,定常時における立脚中期〜立脚終期までのスペクトル解析および,せん断力を求めた結果,現時点では定常時のみであるが,この値を基準とし,滑り判定を行うことは定常時かつ直進歩行であれば可能であることが示された.その方法としては,実験より推定できる条件から 1.定常歩行時の合成荷重の大小にかかわらず,9Hz以上の値になると滑りである可能性がある. 2.定常歩行時の合成荷重から閾値を設け,その値の大小に関わらずに閾値を超えれば,周波数が8Hz以内であっても滑りである可能性がある. ということである. 反対に滑りではない条件としてあげられるのは,せん断力が閾値に納まりかつ,周波数も8Hz内であるということである.この条件でマイコン制御を行えば,直進かつ定常であれば立脚中期〜立脚終期の滑りを表現することは可能であると考えられる,ここで,歩き始めと歩き終わりのせん断力が安定しないために,滑りと判定してしまうことになるということも考えられる. 以上より,実験にて腰部に装着した加速度センサは振動成分の影響が少ないということがわかったので,速度計として使用することにより観測値の相関に基づき,歩き始め,歩き終わりの状態を推定もできると考えられることは重要な知見である.
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