Research Abstract |
ドイツの衰退地区を対象として市街地再生を実施している社会都市プログラムであるが,総合性の確保が大きな課題である。このために,重要な役割を果たしているのが,地区マネージメントであり,地区マネージャーが,地区内に立地する現地事務所で,地区ビューローとして地区マネージメントを行う実態が明らかになった。 地区ビューローが最初に設立されたのは,ノルトライン・ベストファーレン州であることから,当州を中心に調査を行った。地区マネージメントを実施する団体が,行政,NPO,公営住宅企業,大学などであること,行政実施とその他では,地区の特徴や運営に違いがあること,地区マネージャーはまだ十分に確立された職業とはなっていないこと,地区ビューローの設置期間は期間限定であること,期間終了後の地区マネージャーの役割が重要であること,地区マネージャーには,建築・都市計画系専門家と,社会教育福祉系専門家に分かれるが,それ以外の専門家も存在すること等が明らかとなった。また,課題として,社会都市は,各種分野の統合プログラムとして設置されたが,各行政や地区マネージャーの特性により,どちらかに偏りがちであり,ハード整備が必要であるにもかかわらず,ハード整備が進みにくくソフト的な対策しか進まない場合,ソフト事業が対策が必要であるにもかかわらず,ハード整備にばかり重点が行く場合などがあり,総合性の確保が難しいケースがある。 また,市街地プログラム終了後の,各地域での取り組みが問題であることがわかり,比較的早い段階から取り組んでいるモデル地域についても調査に取り組んだ。終了後,ほとんど発展性の見られない地区もあるが,住民を中心に多様な取り組みへと発展している地区もあり,この差は,地区のネットワークをどの程度期間内で構築できたかによっていると考える。
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