2009 Fiscal Year Annual Research Report
ガマズミ属植物における共生器官ダニ室の多様性とその適応的意義の解明
Project/Area Number |
18570085
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西田 佐知子 Nagoya University, 博物館, 助教 (10311490)
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Keywords | ダニ室 / ガマズミ属 / domatia / 多様性 / 共生 |
Research Abstract |
下記1・2のような調査を行うとともに、これら結果と昨年度までの研究を併せ、ダニ室多様性について総合考察した。 1)ダニ室多様化の歴史的背景の探索:昨年から継続してガマズミ属の分子系統樹構築を試みたが、独自系統樹作成は成功しなかった。そこで、他の研究者による分子系統樹を使用し、ガマズミ属の種分化の歴史とダニ室の形質を比較した。その結果、ダニ室の有無という形質はガマズミ属の系統樹上に散在し、系統と強い相関はないことがわかった。穴型のダニ室については、情報が不足していて系統との関連を見ることはできなかった。 2)ダニ室多様性の形態学的研究:樹脂切片法にて組織標本を作製し、ダニ室の構造とその形態形成を記載・比較した。その結果、穴型のダニ室も毛束型のダニ室も葉の展葉期から形成が開始されること、同じ毛束型に分類されるダニ室も、毛の形状や密度が種によって異なることを確認した。 3)総合考察:これまでに得られた知見を統合・分析し、ガマズミ属におけるダニ室の多様性について総合考察を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 ガマズミ属でダニ室を持つものは、調査種45種のうち約半数であり、アジアに比較的多かったものの、ダニ室の有無は地域・系統などで明確には分かれなかった。ダニ室を持つものの多くは、毛束型の形状だった。 生態学的調査によって、同地域の穴型と毛束型のダニ室では、ダニの種類は重なるものの数などに差があること、違う地域の同じ穴型のダニ室では、ダニの種類・数ともに異なること、同じ地域の同じ形のダニ室でも、季節によってはダニの種類や数が異なることを明らかにした。 これらの結果から、ガマズミ属のダニ室は、生態的要因で並行的に進化した可能性があること、形状などによって利用者が異なる傾向はあるが、特定のダニとの強い共生関係を作るものではなく、緩やかで多様な関係を保つ共生器官である可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)