2006 Fiscal Year Annual Research Report
アジア産ヒラタクワガタにおける形態形質変異の遺伝的基盤および種分化機構の解明
Project/Area Number |
18570095
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
五箇 公一 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主席研究員 (90300847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立田 晴記 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (50370268)
今藤 夏子 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, NIESポスドクフェロー (10414369)
国武 陽子 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, NIESポスドクフェロー (90414367)
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Keywords | ヒラタクワガタ / DNA / 系統解析 / 生物地理 / 種分化 / Wolbachia / 進化 / 生殖隔離 |
Research Abstract |
ヒラタクワガタの分子系統解析について、DNAデータバンクおよび文献情報より、核DNAの特定遣伝子領域を増幅するためのプライマー設計を行った。特にこれまでに昆虫類で解析が行われている領域については縮重プライマーを使用し、保存性の高い領域についてはユニバーサルプライマーを使用した。さらに鞘翅目昆虫の既存DNAデータからも独自にプライマー設計を行った。その結果、Pepck,LWRh,18SrDNA,および28SrDNA遺伝子領域の増幅に成功した。一方、wingless遺伝子については増幅が認められなかった。今後これらの遺伝子領域について塩基配列解析を行い、遺伝的変異の実態について調査する。 ヒラタクワガタ系統間の交雑実験については、日本列島産系統間の交雑、東南アジア産系統間の交雑、および日本列島産-東南アジア産系統間の交雑を行った。日本列島産系統間の交雑については、本州ヒラタ、ツシマヒラタ、サキシマヒラタ、オキナワヒラタ、およびアマミヒラタ間で交雑実験を行った結果、本州ヒラタ-ツシマヒラタ間の交雑以外では、雑種子孫を得ることが出来なかった。同様に、東南アジア産系統については、スマトラオオヒラタ(インドネシア)、パラワンオオヒラタ(フィリピン)、ミンダナオオオヒラタ(フィリピン)、およびセレベスオオヒラタ(インドネシア)間で交雑実験を行った結果、雑種を得ることは出来なかった。一方、上記日本列島産系統と東南アジア産系統の間で交雑実験を行った結果、メス親が東南アジア産系統の場合、いずれの組み合わせでも高い交雑和合性が認められ、多くの雑種成虫が得られた。メス親が日本産系統の場合は体サイズの違いから交雑が成立しなかった。以上の結果から、遺伝的・地理的距離と交雑和合性の高さの間には、通常の相関関係(即ち、遺伝的に近いものが交雑和合性が高い)とは逆の相関関係が存在することが示唆された。今後さらに交雑の組み合わせ系統数を増やして系統間の交雑和合性の実態を明らかにする。 ヒラタクワガタ細胞内共生微生物の検出については、これまでミトコンドリアDNA系統解析に使用した地域系統のDNAサンプルについて、共生細菌ボルバキアDNA特異的プライマーを用いてPCR法によるDNA増幅を試みたが、増幅産物は認められず、感染は確認されなかった。今後、さらに解析サンプルを増やすとともに、成虫個体を解剖して生殖器官のDNA抽出を行い、感染の有無を確認する。
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