2008 Fiscal Year Annual Research Report
アジア産ヒラタクワガタにおける形態形質変異の遺伝的基盤および種分化機構の解明
Project/Area Number |
18570095
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
五箇 公一 National Institute for Environmental Studies, 環境リスク研究センター, 主席研究員 (90300847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立田 晴記 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 主任研究員 (50370268)
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Keywords | ヒラタクワガタ / DNA / 系統解析 / 生物地理 / 種分化 |
Research Abstract |
ヒラタクワガタの分子系統解析について、マレー半島およびフィリピン諸島、セレベス島のサンプルを追加してミトコンドリアDNAの解析を行った結果、マレー半島個体群と、スマトラ島個体群は遺伝的に極めて近い関係にあることが判明して、スンダランド諸島におけるヒラタクワガタ分化の歴史のシナリオがより明確となった。さらにセレベス島内には遺伝的2系統が存在することも明らかとなった。さらに、核DNAの変異を調べるため、一般的にミトコンドリアDNAと同等の進化速度をもつと考えられるInternal Transcribed Spacer領域の増幅を試みた、その結果、500万年以上分化した系統間でも、わずかに1塩基しか変異がないことが示された。 ヒラタクワガタ系統間の交雑実験については、日本列島産の本州ヒラタ、ツシマヒラタ、サキシマヒラタ、オキナワヒラタ、およびアマミヒラタと東南アジア産スマトラオオヒラタ(インドネシア)、パラワンオオヒラタ(フィリピン)、ミンダナオオオヒラタ(フィリピン)、およびセレベスオオヒラタ(インドネシア)間で交雑実験を昨年度に引き続き行った結果、高い交雑和合性が認められ、多くの雑種成虫が得られた。メス親が日本産系統の場合は体サイズの違いから交雑が成立しなかった。さらに同じ東南アジア産系統であるスマトラオオヒラタとダイオウヒラタの間でも交雑和合性が高く、多数の雑種を得ることができた。また同様に同じ日本列島産系統であるツシマヒラタと本州ヒラタの間でも多数の座種が得られた。昨年度からの結果を総合すると分化して100万年以下の個体群同士の場合は交雑和合性が低く、100万年以上隔離され、リング種的な位置関係にある場合は交雑和合性が高くなる傾向が示され、通常、負相関関係を示す交雑和合性と遺伝的距離がクワガタの場合、正の相関を示すことが明らかとなった。また、ツシマヒラタと本州ヒラタは九州北部で同所的に生息しており、このエリアではハイブリッドゾーンが形成されている可能性が高い。上記のように核DNAマーカーの開発には、時間が必要であるが、大顎の形態分析によって雑種化の解析に期待がかかる。 そこで雑種の形態形質の解析手法を開発するために、室内飼育により、ヒラタクワガタの地域系統間の交雑実験を行い、F1世代を作出した。親世代とF1世代の大顎形状を比較するため、楕円フーリエ解析により、大顎の輪郭形状を数値化した。次に標準化フーリエ係数を基に多変量解析を行い、各種の大顎形状の特徴を抽出するとともに、サイズを標準化した際の親種の大顎平均形状とF1世代の大顎形状を比較した。その結果、F1雑種の大顎形状は、雌雄両親の形状とは異なるが、雌親系統の特徴が強く出る傾向があることが示されたこの形状解析手法を用いれば、雌雄の親系統の推定が可能になると考えられた。
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