Research Abstract |
本年度の研究は,人間の意識や行動と関連の深い体感温度を指標として地区スケールの熱環境の解析、評価を実施すること,ヒートアイランドの実態との関連で日常的な生活行動やヒートアイランドに係わる地域住民の意識を明らかにすること,2箇年の研究成果の総括を行うことを目的に実施した。地区スケールでの熱環境の解析、評価では,千葉市美浜区高浜地区をケーススタディとして,一般的な街路,海からの風の流入が期待される水路沿いの街路や広幅員街路,公園内の舗装地,裸地,芝生地,樹林地を対象に夏季の日中(10〜15時)に気象観測を実施し,DI,SET^*,WBGTを算出した。その結果,夏季の日中における屋外空間は総じて不快とされるレベルであるが,熱中症予防の面や夏服での胡座安静状態という条件での快適性の確保の面では,公園内の樹林地という緑陰の存在が有効であることが把握された。ヒートアイランドに係わる住民意識の把握については,前年度までの研究成果を踏まえて,日中,夜間,早朝を通じて夏季のヒートアイランドが顕著な市街地中心部の新宿地区,郊外に位置し他地域と比較して低温の傾向にある桜木地区,平均的な地区として山王地区を選定し,住民へのアンケートを実施した。その結果,明け解から早朝までの冷房の使用頻度,屋外での涼める場所の多少感,水と緑の気象緩和作用に関する認識の強さ,ヒートアイランド対策における壁面緑化や屋上緑化,海からの風の通り道の確保への認識の強さなどでヒートアイランドが顕著な地区と比較的低温な地区との差異が明確に認められた。最後に,2箇年の研究を総括し,都市におけるヒートアイランド対策のための地区の類型化手法とそれに基づく具体的対策の方向性,日常生活の快適感や健康への影響の軽減からみた屋外空間での緑陰の確保の必要性,地域住民の環境意識や生活行動に配慮した対策の展開の可能性を考察した。
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