2007 Fiscal Year Annual Research Report
トランス酸による食品物性および嗜好性改変効果の解明と代替物の探索
Project/Area Number |
18580120
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松村 康生 Kyoto University, 農学研究科, 教授 (50181756)
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Keywords | トランス酸 / 食品物性 / 嗜好性 / 乳化食品 / O / W型エマルション / クリーム / 低水分系食品 / ショートニング |
Research Abstract |
トランス酸は乳脂肪中にわずかながら存在するほか、マーガリンやショートニングの製造工程で多く生じる脂肪酸である。トランス酸が血中コレステロールレベルを上昇させるという報告が相次ぐ中、米国では食品中のトランス酸含量の表示が義務づけられた。我国においても、トランス酸の低減化が重要な課題となっている。しかし、トランス酸を含む油脂は、優れた物性・嗜好性を有するため、代替油脂の使用が困難な状況となっている。特にO/W型エマルション食品や低水分系食品における代替は非常に難しいと予想されている。本研究では、これら乳化食品や低水分系食品において、トランス酸の優れた食品物性改変効果がどのような機構で発現するのか解明することを目的とする。また、その結果明らかとなった基礎的知見に基づき、トランス酸の代替物を探索することを最終目標とする。 平成19年度においては、トランス酸を含む油脂成分より調製したクリーム(O/W型エマルション)の物性が乳化剤によってどのように変化するのかレオロジー測定、DSC測定、ESR測定などの手法を駆使することによって解析した。その結果、乳化剤やリン脂質の種類に応じて、トランス酸の結晶化は促進されたり抑制されたりすること、また物性変化のパターンも異なったものになることが明らかとなった。特に使用した乳化剤の構造とクリームの分散安定性の間に深い関連性のあることを明らかにした。一方、パン生地(ドウ)におけるショートニングの役割についても解析を加えた。トランス酸を含む、あるいは含まないショートニングのドウ中における分散状態を共焦点レーザー顕微鏡を用いて観察するとともに、そのレオロジー特性も調べた。その結果、トランス酸の有無によって、ショートニングの分散性、ドウ物性改変効果に違いが認められた。今後は、グルテンタンパク質やデンプンなど他成分とトランス酸との相互作用の観点から解析を勧める必要がある。
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