Research Abstract |
本研究では,近年東アフリカ各地において生産が拡大している新規商品作物であるバニラについて,その導入プロセスならびに栽培・加工・流通の実態を農家〜地域レベルで調査し,資源利用と経済効果の観点から適性評価をおこなうとともに,地域特性に応じた作物の導入を核とした農村の自立的発展のあり方を実証的に考究するものである。今年度は,タンザニア中部ウルグル山地(モロゴロ州),ザンジバル島,ビクトリア湖西岸地域(カゲラ州)およびウガンダ南東部(ムコノ州)において現地調査を実施し,各地におけるバニラ導入の歴史的,地理的経緯ならびに地域全体のバニラ生産,加工,流通量を把握した。その結果,(1)タンザニアでは1980年代にウガンダからビクトリア湖西岸へ,またコモロ諸島からザンジバルへというバニラ栽培の伝播があり,農家の自主的な努力と工夫で各地の条件に適した栽培方法が確立されてきたこと,(2)90年代後半の価格高騰を契機に,政府プログラム等によって国内各地に栽培が広がったものの,加工・流通の基盤が未整備で農家の収益性は必ずしも高くないこと,(3)一方でウガンダでは民間資本による大規模な栽培普及と加工・流通体制の整備により産地形成が進んだことが明らかになった。また,ビクトリア湖西岸地域においては,事例農家40軒について作物の導入経緯と過去5年間の営農状況(栽培面積,株数,生産量,出荷量,出荷先,労働力,収益等)の推移ならびに栽培現況(立地,混作状況,土壌,生育状態等)の聞き取り,サンプリングをおこなった。現在,データ分析およびGISによるマッピングを進めている。
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