2007 Fiscal Year Annual Research Report
内在性低酸素応答性転写抑制因子HIF-3αの性状解析と抗腫瘍効果の検討
Project/Area Number |
18590071
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
原 俊太郎 Showa University, 薬学部, 准教授 (50222229)
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Keywords | 低酸素応答性転写因子 / HIF / 腫瘍血管新生 / 転写調節 / がんの悪性化 |
Research Abstract |
本研究では、腫瘍血管新生において重要な役割を担う低酸素応答性転写因子HIFの3つのアイソフォームのうち、内在性の抑制因子としてはたらくHIF-3αに注目し、その性状を明らかにし、かつその抗腫瘍効果を検討することを目的としている。本年度は、HIF-3αのsplicingvariantの1つHIF-3α2の抗腫瘍効果の検討、ならびに膀胱癌の進行におけるHIFの機能解析を行った。1.HIF-3α2の性状解析:HIF-3α2は他のsplicingvariantであるHIF-3α1とほぼ同一の構造をもち転写活性化ドメインを有するにも関わらず、低酸素応答配列(HRE)を介する転写を全く活性化せず、別のHIFのアイソフォームであるHIF-1や-2によるHREを介した転写を抑制する。このHIF-3α2の発現ベクターをヒト腎細胞癌由来VMRC細胞に導入したところ、ベクターの用量に依存し、低酸素によるHREを介した転写活性化ドメインを有するにも関わらず、低酸素応答配列(HRE)を介する転写を全く活性化せず、別のHIFのアイソフォームであるHIF-1や-2によるHREを介した転写を抑制する。このHIF-3α2の発現ベクターをヒト腎細胞癌由来VMRC細胞に導入したところ、ベクターの用量に依存し、低酸素によるHREを介した転写、GLUT-3発現のいずれもが抑制されることがわかった。さらに、ヌードマウスの皮下にVMRC細胞を移植すると癌が形成されるが、腫瘍組織内にHIF-3α2の発現ベクターをHVJ-リポソーム法により導入すると、このヌードマウスに形成される癌の増殖が抑えられることもわかった。HIF-3α2はそのHRE依存的転写の阻害作用により抗腫瘍効果を示すと考えられる。2.膀胱癌細胞におけるHIF-1の機能解析:これまでに私たちは、膀胱癌の悪性化にはプロスタグランジンE受容体の1つEP1の活性化が関わることを示してきたが、今回、ヒト膀胱癌由来EJ細胞を用いEP1の活性化に伴いHIF-1αタンパク質が安定化されることを見出した。おそらくEP1の活性化により引き起こされる細胞内カルシウムイオン濃度の上昇がHIF-1αの分解を抑制すると考えられる。このHIF-1αの安定化はHIF-1依存的なVEGF等の発現を介し癌を悪性化すると考えられ、HIF-1の活性を抑制するHIF-3αは膀胱癌の悪性化を抑える可能性が期待される。
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