2006 Fiscal Year Annual Research Report
性腺ステロイドホルモンが海馬機能に及ぼす影響と性差
Project/Area Number |
18590219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
美津島 大 横浜市立大学, 医学研究科, 準教授 (70264603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 冨久子 横浜市立大学, 医学研究科, 客員教授 (40046066)
舩橋 利也 横浜市立大学, 医学研究科, 準教授 (70229102)
高瀬 堅吉 横浜市立大学, 医学部, 助手 (80381474)
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Keywords | 性分化 / エストロジェン / テストステロン / アセチルコリン / 学習・記憶 / 海馬 / ストレス / 行動リズム |
Research Abstract |
自由行動状態の雌雄のラットで24時間の海馬体内アセチルコリン(ACh)分泌動態を確認すると、明期に低く暗期に高い、自発行動と相関した明確な日内変動を示す。また、ACh分泌量は雌性と比べ雄性で高く、明確な性差を示す。我々は性腺を摘除すると自発行動との相関が低下し、暗期に通常見られるACh分泌の高まりが減弱し、性差が消失することを確認した。さらに精巣摘除したラットにテストステロンを補充し、卵巣摘除ラットにエストロジェンを補充すると正常な分泌動態が回復し、性差も認められることが判明した。その一方で、精巣摘除ラットにエストロジェンを補充したり、卵巣摘除ラットにテストステロンを補充しても、性特異的なACh分泌動態が雌雄入れ替わるわけではないことも確認した。これらの結果から、(1)性特異的な性ホルモン環境が海馬体内ACh分泌を維持していること、(2)ACh分泌に対する性ホルモンの影響には性差があり、この性差は性分化の影響を受けていることが示唆された。免疫組織学的に中隔や対角帯に存在するChAT陽性細胞数を確認したところ、ChAT陽性細胞数も性腺摘除によって減少したが、精巣摘除ラットへのテストステロン補充、もしくは卵巣摘除ラットへのエストロジェン補充によってChAT陽性細胞数は正常に維持された。 次に脳の性分化の影響を検討するため、テストステロンプロピオネート(100μg)またはoilを生後0日と1日の雌性ラットに投与し、成熟後に卵巣摘除とテストステロンの補充を行った。Oil投与群では脳の性分化がおこらず、成熟後に雄性のステロイド環境を再現しても雄性ラット特有のACh分泌動態は確認されなかったが、テストステロンプロピオネート投与群を成熟後に雄性のステロイド環境にするとACh分泌量が有意に高まり、雄性ラット特有のACh分泌動態が確認された。以上より、海馬体内に投射するAChニューロンは脳の性分化の影響を受けていることが明らかとなった。
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