2007 Fiscal Year Annual Research Report
慢性関節炎発症時における非ステロイド系抗炎症薬の消化管傷害の増悪機序の解明
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18590518
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
加藤 伸一 Kyoto Pharmaceutical University, 薬学部, 講師 (90281500)
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Keywords | アジュバント関節炎ラット / 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID) / 消化管傷害 / 一酸化窒素(NO) / 誘導型NO合成酵素(iNOS) / 内皮型NO合成酵素(eNOS) / Toll-like receptor 4(TLR4) / マクロファージ |
Research Abstract |
慢性関節炎における非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)による消化管傷害の増悪機序を明らかにする目的で昨年度に引き続き種々の検討を行い、平成19年度は以下のような研究成果が得られた。 1)関節炎ラットにおいては、NSAID投与後の小腸傷害の発生が正常ラットに比較してより早期から認められることが判明し、これが小腸傷害の増悪に関係しているものと考えられる。また、関節炎ラットの小腸粘膜では、NsAID投与前の平常時から、iNOS発現の増大およびTLR4陽性マクロファージの浸潤増大が観察され、iNOSは主としてTLR4陽性マクロファージに発現していることが判明した。これらの結果より、関節炎ラットにおけるより早期からの小腸傷害の発生ならびにNSIAD投与24時間後の小腸傷害の増悪は、TLR4陽性マクロファージの浸潤増大に起因したiNOS/NOの増大によるものと推察される。 2)以前、申請者は関節炎ラットにおいては、NSAIDによる胃損傷が著明に増悪すること、またこの現象にはiNOS/NOが関与していることを報告している。本研究において、関節炎ラットの胃粘膜ではiNosのみならずeNOS発現も著明に増大していることを観察した。また、セルレイン誘発急性膵炎発症時に認められた、eNOS不安定モノマーの形成は関節炎ラットの胃粘膜では認められず、NO産生自体が著明に増大していることが判明した。関節炎ラットにおけるNSAID誘起胃損傷の増悪は選択的iNOS阻害薬によっては部分的に抑制されるに過ぎなかったが、非選択的NOS阻害薬によりほぼ完全に抑制された。このeNOSは主としてCD31陽性血管内皮に発現していた。以上の結果より、関節炎ラットの胃粘膜ではiNOSのみならずeNOSから産生されるNOもまた傷害性に寄与しているものと推察される。
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