Research Abstract |
4-Hydroxynonenal(HNE)は,多価不飽和脂肪酸に酸化ストレスが作用して生じる過酸化物である.HNEは,タンパク質を修飾し,その機能を失わせ,また安定な"酸化ストレスマーカー"として知られる. 1.初期感染症モデルであるLPS投与ラットを用いて,心臓・大動脈・腎臓・肝臓・腸管などにおけるHNEの生成量の測定,酸化ストレス発生源の同定を行った.この結果,(1)腸管粘膜では形質細胞から分泌されるIgAがHNE化を受け,これによってIgAはポリマー化しているらしいこと,また,この作用によって大腸菌に対する溶菌能が低下していることがわかった.(2)肝臓ではLPSによるHNEの産生はNADPH oxidaseの阻害剤であるapocyninや,lipoxygenase,CYP2E1によって阻害された.主に小胞体で酸化ストレスが生じており,GRP78がHNE化を受けていることが推測された.2.国立循環器病センター,東京女子医大循環器内科から提供されたヒト血漿検体のHNEを測定し,予備実験において,血中HNEの急性冠症候群,急性心筋梗塞患者活動期における上昇を確認したので事例を増やして検討している.HNEの疾患特異性や,病態との関連,薬剤による治療効果に関係があるかどうかの検討を行っているが,まだ有意差がでるまでの結果は得られていない.3.新たにニトロチロシン(NT)とニトロトリプトファンのイムノアッセイを開発した.自然高血圧発症ラットを用いた実験で,高血圧発症後に運動がどのような効果をもたらすかについて,HNEとNTの測定を行ったところ,心筋,胸部大動脈,運動に関係した骨格筋などで運動後にNTが下がることが認められた.HNEは高血圧発症後には増加したが,運動による減少は認められなかった.NTとニトロトリプトファンの相関について検討中である.
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