Research Abstract |
短時間作用型β_1遮断薬ランジオロールの術中静脈内持続投与による心筋保護作用に対する麻酔薬による影響を心筋代謝,局所壁運動および心電図ST-Tトレンド解析から検討した。 研究に同意の得られた予定心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)患者48名を対象とし,プロポフォール群(P群,n=10),プロポフォール+セボフルラン群(P+S群,n=13),プロポフォール+ランジオロール群(P+L群,n=11)およびプロポフォール+セボフルラン+ランジオロール群(P+S+L群,n=14)に分類した。麻酔はプロポフォール4-6mg/kg/hrとフェンタニル(総量10-15μg/kg)で維持した。P+L群,P+S+L群は麻酔導入後よりランジオロール20μg/kg/minで静脈内持続投与した。P+S群およびP+S+L群では胸骨切開後セボフルラン0.5MACを30分間吸入し,30分間洗い出し期間をおいて冠動脈を遮断した。麻酔導入前,手術終了直後,4時間後,18時間後に採血しトロポニンT,トロポニンI,CK-MB,HFABPをそれぞれ測定した。心筋代謝の各指標は手術後に全群ともに有意に上昇した。P群の手術4時間後トロポニンT値はP+S群,P+L群,P+S+L群と比較し有意に高く(P群,0.50±0.10;P+S群,0.28±0.05;P+L群,0.25±0.03;P+S+L群,0.21±0.04ng/ml,mean±SE),トロポニンI値はP+S群およびP+S+L群よりも有意に高かった(P群,2.3±0.5;P+S群,1.1±0.3;P+S+L群,1.0±0.2ng/ml,mean±SE)。 プロポフォール麻酔下のOPCAB患者においてランジオロールはセボフルランによるプレコンディショニング作用と同程度の心筋保護作用を示した。しかしランジオロールとセボフルランによる心筋保護作用はさらなる相加作用は認められないことが示唆された。
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