2008 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚障害をもたらす嗅粘膜上皮のアポトーシスの誘導経路とその抑制に関する解析
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18591901
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 幸士 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 助教 (50323548)
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Keywords | 嗅覚 / 嗅細胞 / アポトーシス |
Research Abstract |
平成20年度はメチマゾールによって嗅細胞に誘導されるアポトーシスの機序に関してさらに詳細に検討した。平成18年度と平成19年度にかけてメチマゾール投与によりチトクロームc、カスパーゼ-9、カスパーゼ-3の活性化経路によりアポトーシスが誘導されることを報告した。メチマゾールはflavin containing monooxygenaseで代謝される際にsulfenicacidを生じるがsulfenicacidはreactive sulfur species(RSS)に属し、細胞内の還元物質であるグルタチオンと反応してジスルフィドを生じ、グルタチオンを枯渇化させることで間接的にヒドロキシラジカルなどのreactive oxygen species(ROS)を産生させるといわれている。今回はDNAの酸化の指標である8-OHdGと脂質の酸化の指標である4-HNEに対する抗体を用いた免疫染色によってメチマゾールとROSの関係を検討した。対象はSDラットを用いた。コントロール群:生食のみ腹腔内投与、メチマゾール群:メチマゾール300mg/kgを腹腔内投与(各群のn=5)とした。投与24時間に断頭し鼻腔組織のパラフィン包埋冠状断切片を作成した。メチマゾール投与群ではコントロール群と比較して、剥離変性した嗅細胞に一致して8-OHdG、4-HNEの発現亢進を認めメチマゾール投与によりROSが誘導されアポトーシスの原因であることが示された。次にROSとアポトーシスの関係について検討した。mitogen-activated protein kinase(MAPK)カスケードは酸化ストレスをはじめ様々なストレスにより活性化されることが知られているが、主要なものとしてc-jun N terminal kinase(JNK)、p38MAPK、extracellular signal-regulated kinase(ERK)の3つがある。この3つのキナーゼは上位のキナーゼによってリン酸化されることで活性化されるが、今回は活性型JNK、p38 MAPK、ERKに対する抗体を用いた免疫染色によってROSとアポトーシスの関係を検討した。前術の実験で用いた冠状断切片を用いた。メチマゾール投与群では剥離変性した嗅細胞に一致してリン酸化p38 MAPKの発現亢進を認めたが、リン酸化JNKとERKの発現亢進は認められなかった。このことからアポトーシスは主としてp38 MAPKの活性化で生じていることが示された。
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Research Products
(5 results)