2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18650259
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
池田 光穂 Osaka University, コミュニケーションデザイン・センター, 教授 (40211718)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 宏道 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50154092)
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Keywords | 文化人類学 / 生理学 / 脳・神経 / 社会学 / 民族誌 |
Research Abstract |
文化人類学の参与観察の手法を用いて、日本の大学・高等研究機関でおこなわれている脳神経生理学の研究室を対象にして、自然科学的知識の生産・流通・破壊と創造に関する民族誌的研究をおこなった。研究対象は、脳神経生理学の分野のうち、とくに視覚情報の脳内での処理ネットワーク(網膜-外側膝状体[LGN]-第一次視覚野[V1])を研究するグループである。 実験室の民族誌というトピックの選択はともすれば実験室における研究者の行動に焦点を当てて、あたかも実験室という〈生態環境〉における自然科学上のデータを収集する〈採集狩猟民〉を研究するかのごとく誤解される。しかし、そのような研究対象の異郷化(exoticism)は、現代社会を研究する社会の構成員としての文化人類学者を時代錯誤的な探検家と同列にミスリードさせてしまう。研究対象の人たちの間でこのような研究そのものの誤解を避ける必要がある。研究最終年度の実証的考察は、研究室を研究のみならず、後進の指導や実践的な教育の場であることに焦点が当てられ、教育現場における科学者の再生産の面に着目した。 研究室は実験成果を産出する場であると同時に、徒弟的な知識と技術が伝承される場である。教育学や経営学の観点からいうと「現場での訓練」(OJT)であるが、同時に研究室でのセミナーやリクレーションや飲酒の機会などがあり、それらがモラルコミュニティとしての研究室を構成している。知識と実践と倫理が交錯し、それらが中心から周縁の活動を容認する点で、レイブとウェンガーが明らかにした周辺的正統参加(LPP)の側面やその実態についても素描することができた。 研究室をとりまく大学・高等研究機関の短い歴史的時間(2,30年のオーダー)の中で研究室のダイナミズムを描写する必要を感じ、関係者への歴史的インタビューをまとめて最終報告書として公刊する予定である。
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Research Products
(6 results)