2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18654073
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
甲斐 昌一 九州大学, 大学院工学研究院, 教授 (20112295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪本 修 九州大学, 大学院システム生命科学府, 特任助教授 (50332250)
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Keywords | 脳・神経 / 生体生命情報学 / 認知科学 / 自己組織化 / 生物物理 |
Research Abstract |
ヒト脳波の主要成分であるアルファ波は、後頭部に最も顕著に現れる10Hz前後の律動である。これは光感覚受容器を介して入力されるフリッカー刺激の影響を強く受け、その周波数がアルファ波と調和関係に近いときアルファ波が位相同期する。本年度は、この位相同期が皮質部位間に如何なる連関があるか、また雑音下ではどのように振舞うのかを調べた。また図形認識などの高度な視覚情報処理における脳波リズムのダイナミクスを明らかにするため、多義図形を提示した際の見えの交替時の皮質部位間の位相ダイナミクスを調べた。実験研究を行うにあたって、まず皮質上の広範にわたる脳波リズムの分布を明らかにするために、32チャンネル脳波計を導入し、測定により得られた時系列データをウェーブレット解析および複素デモジュレーション法によって解析した。これにより以下の点が明らかになった。 (1)視覚刺激に対する脳波の引き込みは、フリッカー刺激だけでなく、より高度な視覚認知においても現れることが分かった。すなわち前頭部から頭頂部にかけて顕著に現れるガンマ波は知覚判断を反映するとされる脳波成分であるが、これが刺激提示後150〜600msに特徴的な引き込みを示した。とりわけ高度で複雑なヒト顔認知過程ではガンマ波の間欠的な引き込みが観察された。また、刺激材料として多義図形を提示すると、知覚交替に伴って後頭部O1と前頭部F3のあいだでガンマ波の位相同期が起こった。これらの視覚認知に伴う位相ダイナミクスの詳細と生理学的側面については未解決であるため、引き続き次年度に調べる。 (2)次に視覚認知に伴う位相ダイナミクスに対する雑音の効果を調べた。今年度は主としてアルファ波に絞って、その確率同期を研究した。すなわち、単純な周期配列パターンを被験者に提示し、一方の眼に雑音光を印加した。その結果、(a)光駆動の閾値を超えない弱い摂動に対しては後頭部のみに確率共鳴が認められ、ほかの部位の脳波に有意な変化が見られなかった。その一方で、(b)光駆動を起こす強い刺激条件では、前頭部・側頭部を含む広範な皮質部位にわたって、アルファ波成分の振幅が雑音光により増大することがわかった。またある適度なノイズ強度に対して振幅が最大となった。ただし被験者や提示図形の影響が大きいため、詳細な検討を次年度に行う。
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