2007 Fiscal Year Annual Research Report
無脊椎動物の行動制御における「手続き」的脳内表示とその感覚種依存性
Project/Area Number |
18657025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高畑 雅一 Hokkaido University, 大学院・理学研究院, 教授 (10111147)
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Keywords | アメリカウミザリガニ / 道具的条件づけ / 「手続き的」記憶 / 感覚種(モダリティ) / 鋏脚 / 視覚刺激 / 感覚情報 / 運動出力 |
Research Abstract |
無脊椎動物の学習に伴う行動変化が脳内の神経活動としてどのような形で表現されるか、という疑問に答えるための一つの有効なアプローチは、感覚刺激から運動出力に至る神経情報の流れを生理学的・解剖学的に同定して比較するという方法である。この情報の流れは、動物が置かれている同時的な体内・体外環境のみならず、脳に蓄えられた記憶によっても影響を受ける。この記憶は、動物の刺激に対する反応という行動として観察されるのもので、ヒトの「手続き的」記憶(LR Squire, J Cogn Neurosci, 1992)に対応する。本年度は、この無脊椎動物における「手続き的」記憶が感覚種を超えて成立するか否かを解析するための実験プロトコルを確立する目的で、アメリカウミザリガニHomarus americanusを用いて、道具的条件づけの可能性を検討した。水槽内の動物は、実験者の直接的な給餌に対して数日で実験者の姿に反応するようになる。実験者の代わりに、光刺激を与え,その時に水槽内の特定部分を鋏脚で鋏むと餌がもらえるという実験を繰り返すと、動物は数時間以内に、光刺激時に鋏脚反応を起こすようになる。この学習効果は短くても1日程度は保持されるものと推測される。これらの結果はいずれも定性的であり、体系的に検証されたものではないが、予備実験としてはポジティヴな結果が得られたと判断した。今年度はさらに、この訓練を自動的に行うための基礎的技術として、パーソナルコンピュータ(PC)による発光パターン制御およびPCと接続した機械センサーによる鋏脚運動の実時間監視を実現することができた。次年度には、自動給餌装置によって訓練を機械化して、学習の感覚種依存性を定量的に解析する予定である。
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