2006 Fiscal Year Annual Research Report
ダニの唾液由来免疫抑制因子を用いるダニ媒介性病原体の伝播阻止
Project/Area Number |
18658117
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小沼 操 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 教授 (70109510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助教授 (90250498)
今内 覚 北海道大学, 大学院獣医学研究科, 助手 (40396304)
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Keywords | フタトゲチマダニ / ダニ唾液由来因子 / 免疫抑制因子 |
Research Abstract |
マダニは吸血時に種々の病原体を伝播することにより感染症を媒介する。マダニは動物に吸着すると10-14日間吸血を続け、その間に唾液腺から多種の生理活性物質を動物体内に注入し吸血を持続する。病原体の伝播にマダニの唾液は重要な役割を担う。すなわち、マダニが吸血して4-5日で、マダニ唾液腺内の病原体が動物体内に注入され感染が成立する。これまでにダニの唾液は病原体増殖作用や宿主免疫抑制作用が明らかとなっているが、分子の同定はされていない。そこで今回、Haemaphysalis longicornis(フタトゲチマダニ)由来宿主免疫抑制因子の同定と機能解析を行なった。吸血5日目のダニの唾液腺よりRNAを抽出しcDNAライブラリーを構築し発現遺伝子(EST)解析を行った。得られた653配列をNCBI blastX programを用いて蛋白データベースと比較した結果、免疫抑制作用が示唆される1配列が得られた。本遺伝子のダニにおける発現動態をReal-time PT-PCR法を用いて定量解析を行った結果、吸血前や卵では発現が認められず、吸血刺激によって発現が誘導されること、とくに吸血3日目にピークに達していた。また、本遺伝子は幼ダニ、若ダニおよび成ダニで共通して発現が認められ、宿主へ注入される暴露型抗原であることも明らかとなった。次に、得られた遺伝子情報をもとに組み換えタンパクを作成し宿主免疫への影響を解析した。すなわち、Concanavalin A存在下の牛末梢血単核球(PBMC)に組み換えタンパクを加え、細胞増殖反応に対する影響を濃度依存性にPBMCの増殖反応を抑制した。さらに、このときのPBMCにおけるサイトカインの発現を定量した結果、本因子はInterleukin (IL)-2、IL-12p40およびTumor necrosis factor (TNF)-aの発現を強く抑制した。また、BALB/cマウスに10日間隔で3回皮下接種(150mg, n=3)した結果、脾臓の萎縮が認められ、これらのマウス由来の脾臓細胞は各種Mitogenに対する反応性が著しく低下していた。この新規因子は宿主免疫を強く抑制することが明らかとなり、ダニの吸血の維持のみならず病原体の侵入を助長させる因子である可能性が示唆された。
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Research Products
(3 results)