2006 Fiscal Year Annual Research Report
血液脳関門透過能をもつES細胞由来細胞株の樹立と脳内ターゲッティング機構
Project/Area Number |
18659023
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
伊藤 孝司 徳島大学, 大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (00184656)
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Keywords | ミクログリア / 脳血管内皮細胞 / 血液脳関門 / ES細胞 / 幹細胞 / 脳内ターゲッティング / リソソーム病 / 遺伝子・細胞治療 |
Research Abstract |
1.Sandhoff病マウス由来核移植ES細胞、骨髄間葉系細胞およびミクログリア細胞株の樹立 中枢神経障害を伴うリソソーム酵素欠損症(リソソーム病)の細胞治療及びex vivo遺伝子治療法の開発を目的として、リソソーム酵素であるβ-Hexosaminidase (Hex)のβ鎖遺伝子の変異が原因で、脳内のGM2ガングリオシド(GM2)の過剰蓄積を伴って発症するSandhoff病(常染色体劣性遺伝病)のモデルマウス(SDマウス:Hexb-/-)を対象に、ドナー細胞の樹立を試みた。 1)尾繊維芽細胞由来核移植ntES細胞、骨髄由来間葉系細胞及びミクログリア株の樹立に成功した。このうち幹細胞については自律増殖能と多分化能の保持を確認するとともに、神経幹細胞及び神経細胞への分化誘導に成功した。ミクログリアについては、GM2,GA2以外に末端GlcNAc残基含有オリゴ糖の蓄積とともに、Macrophage inflammatory factor-1(MIP-1α)の分泌及び運動能の亢進を明らかにした。 2)GM2に対するCell-ELISA系を新たに確立し、少数の細胞数(1x10^3程度)を用いて細胞内GM2蓄積量を評価することが可能になった。 3)マウスHexbと緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を含む組換えレンチウイルスを作製してミクログリアに遺伝子導入を行い、得られた恒常発現株において、Hex活性の回復、蓄積基質の減少、MIP-1αの分泌抑制が起こることを明らかにした。 2.マウス血管内皮細胞株(MBEC4)との細胞間相互作用の解析 脳内移行能をもつ骨髄由来細胞やミクログリアと、血液脳関門を構成する脳血管内皮細胞との相互作用と細胞層透過メカニズムを解明する目的で、 1)ミクログリアとの共培養による、MBEC4における細胞間接着分子ZO-1やインテグリン(CD11b)発現変動及びアクチン重合度の変化を解析したところ、ZO-1やCD11bの発現については変動が認められなかったのに対し、アクチン重合については減少傾向が観察された。 2)MBEC4の培養上清をミクログリアに作用させたところ、CD11bの発現とアクチン重合が増大するとともに、培養血液脳関門モデル系においてミクログリアの脳血管内皮細胞層透過を促進した。一方、アストロサイトの培養上清を作用させてもミクログリア内のアクチン重合は促進されなかった。 これらの結果から、脳血管内皮細胞がミクログリアの運動能や脳内移行性を促進する因子を分泌している可能性が示唆された。
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Research Products
(7 results)