2008 Fiscal Year Annual Research Report
北極海における環境変動の監視・実態把握に向けた自律型無人小型飛行機の応用
Project/Area Number |
18681004
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
猪上 淳 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 地球環境観測研究センター, 研究員 (00421884)
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Keywords | 北極海 / UAV / 地球温暖化 / 海氷 / ノルウェー |
Research Abstract |
無人飛行機(UAV)データの解析:2008年夏季に取得したUAV観測データを用いて地表/海面の状態に対する大気の応答を詳細に解析した。観測サイト近傍で行った地表面観測では、日射量が著しく異なる事例(8月10日と12日)を比較し、地表面温度の変動幅が地表面状態によって3〜10Kになることが示された。取得画像の解析から、比較的乾燥した植生域で高温であり、その影響は高度数百mの上空の気温にも及んでいることが判明した。一方、フラム海峡へ向けての長距離飛行(8月14日)では、比較的暖かい大西洋水(5℃前後)上で気温が上昇する気団変質が観測された。この気温の上昇に伴う気圧の低下は数hPaに及び、気圧傾度を強化していた。氷縁域では海氷の融解の影響で水温が0℃まで急激に減少した。 データ同化研究:海氷激減に伴う気象データ減少の影響をあらかじめ見積もるため、北極海に展開されているブイデータを用いた数値実験を行った。ブイデータを取り除いた実験では局所的に数hPaの海面気圧の低下が見積もられ、海氷面の気温や風速に誤差が伝播することが判明した。今後、北極海の環境変化に伴って気象データが不足する事態に陥った場合には、気象データを補完するためにUAVよる機動観測が有効な手法の一つと言える。 今後の展望:本研究課題によって北極圈でのUAV観測が、大気・海氷・海洋・陸面の多分野に有効であることが示された。これをきっかけとして、宇宙航空研究開発機構(JAXA)で2011年度に打ち上予定の衛星(GCOM)に関する海氷プロダクト検証の共同研究が採択された。またCryoWingの使用実績に基づき、さらなるUAVの応用利用を目的とした大型研究課題(ノルウェー科研費)に共同研究者として申請中である。研究代表者の所属機関(JAMSTEC)はノルウェー極地研究所(NPI)と正式な共同研究を締結するための調整が進んでおり、北極研究をより国際的に発展させる動きがある。
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Research Products
(7 results)