2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18683005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高橋 伸幸 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (80333582)
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Keywords | 社会的交換 / 一般交換 / 利他行動 / 間接互恵性 / 適応 |
Research Abstract |
直接の返報が期待できない状況での他者への資源提供は、動物社会では見られない人間社会の特徴である。一般交換とはこのような行動により成立するマクロパターンであり、それは間接互恵性(資源提供者に対する第三者による返報)により成立することが、近年の社会科学及び生物学における研究の急速な発展の中で明らかにされてきた。本研究は、いかなる仕組みが間接互恵性を成立させるのかを、数理モデルとシミュレーションを用いた理論面と質問紙調査及び実験による実証面から明らかにしようとするものである。 最終年度(21年度を含む)は以下の研究を行った。(1) 人々が実際にどのようなドメインの間で行動を連結させるのかを探る質問紙調査を行った。その結果、社会的ジレンマドメイン(SD)と囚人のジレンマドメイン、及び一般交換ドメインとの問では連結が存在することが明らかにされた。ただし、連結はSDでの非協力者を意図的な排除という動機には基づいていないことも示唆された。(2) 19年度までに行った理論研究と先行研究との間の整合性の検討を行った。これまでは、資源を与える相手を行為者自身が選択可能な選択的プレイ状況を想定し、SDと一般交換を連結させる戦略が適応的となるかどうかを検討しており、連結戦略が適応的となるためには、非協力者のみならず、協力的な非連結戦略にも資源を与えないという特徴が必要であることが明らかとなっていた。しかし、数理生物学等で通常用いられるランダムマッチング状況(毎回資源の送り手と受け手がランダムに組み合わされる)を想定すると、上記の性質を備えている連結戦略でさえ適応的とはならないことが明らかとなった。
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