2006 Fiscal Year Annual Research Report
薬物の死後再分布に関する研究 ー死後の血液のpHの低下と薬物のpKaの視点からー
Project/Area Number |
18689017
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
吉留 敬 岡山大学, 大学院医歯薬学総合研究科, 助手 (40304307)
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Keywords | forensic toxicology / postmortem redistribution / acid dissociation constant / perfusion experiment / therapeutic dose / flecainide / methamphetamine / postmortem increase |
Research Abstract |
現在,多種の臨床的に用いられている薬物が,法医剖検死体から投与量の適切さの評価や,投与量と死因との因果関係の判断を迫られている 先ごろ,頻脈性不整脈治療剤酢酸フレカイニドの過剰投与の疑いの有る剖検例を経験し,生前に採取された血液と剖検試料の血液中の薬物濃度の分析を行ったところ,死後試料では生前試料の17.7倍と著しく高値を示した。このことは薬物の投与量の適切さに対する評価や死因の診断を誤らせる恐れのあることを示しており,看過できない問題である。 フレカイニドは遊離状態で塩基性を示す薬物であり,このことが薬物の血中濃度が上昇することと関係があることを,これまでに明らかにしてきた。また,この薬物の移動にはpKaが重要な意味を持つ可能性が考えられた。 そこで今回,フレカイニド(pKa9.36)と同程度のpKaを持つメタンフェタミン(pKa9.9)をウサギに投与し,屠殺直後と屠殺後1日経過後の臓器組織中のメタンフェタミン濃度を調べた。その結果,フレカイニド同様,メタンフェタミンの心臓血中濃度は死後増加し,最大で5倍程度に上昇することが明らかとなった。これはフレカイニドと同等の上昇量である。これによって同程度のpKaを持つ薬物は同様の動態をとる可能性が示唆された。肺からの心臓血中への死後のメタンフェタミンの移行については,いま現在,検討を実行中であるが,フレカイニドと同程度の移行が起こると考えられる結果を得ている。 なお,次年度はこれらをもとにpKaの大きく異なる薬物についての検討を重ねる予定である。
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