2006 Fiscal Year Annual Research Report
樹状突起におけるHCNチャネルの発現と、同時検出の機構解明
Project/Area Number |
18700381
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山田 玲 京都大学, 医学研究科, 助手 (70422970)
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Keywords | 樹状突起 / HCNチャネル / 同時検出器 / 層状核 / 神経科学 / 生理学 |
Research Abstract |
ニワトリ層状核(NL)神経細胞は両側蝸牛神経核からのシナプス入力の同時検出器として働くことで両耳間時差を検出する神経核である。今回、NL細胞における樹状突起の伝達特性に対するIhチャネル(HCNチャネル)の影響を調べる目的で実験を行った。樹状突起が発達しIhチャネルの発現量も多い、低いCF領域の細胞を用いてパッチ記録を行い、細胞体で観察されるmEPSCを解析した。コントロール条件では個々のmEPSCの時間経過の分布は比較的均一であるのに対して、Ihチャネルを薬理学的に阻害するとその時間経過の分布が広がることが分かった。この実験からIhチャネルが樹状突起の伝達特性に関わっていることが確認でき、樹状突起における入力の統合に寄与していることが示唆された。次に実際の機能的意義を調べる目的で、樹状突起を可視化した標本を用いて樹状突起局所への投射線維を選択的に電気刺激したところ、細胞体で観察されるEPSPもmEPSCの場合と同様に、刺激部位によらず比較的均一な時間経過を示した。今後Ihチャネルを薬理学的に阻害した時のBPSPおよび同時検出制度に対する影響を検討していく予定である。また抑制性入力についても検討したところ、低いCF領域の細胞で観察されるmIPSCは他の領域の細胞に比べ4倍程度早い時間経過をもつことが分かった。早い時間経過を持つことは音の時間情報を処理する上で有利であり、重要な役割を持つ可能性が示唆される。今後は抑制性入力の性質および分布についても詳細に解析していく予定である。これらのことから、NL細胞における興奮性および抑制性シナプス入力についての詳細を明らかにし、シナプス入力の統合にIhチャネルが具体的にどのように関わるのか、さらには樹状突起が果たす神経情報の処理と統合における具体的な役割を最終的には明らかにしたい。
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