Research Abstract |
本研究では,主に中等度から重度の誤嚥を伴う嚥下障害(ワレンベルグ症候群など)患者を対象として,喉頭挙上を適切なタイミングと強さで行わせる経皮的電気刺激装置の開発を目的としている.電気刺激装置としては,村岡が開発した筋電導出兼電気刺激装置を改変し応用する.本装置は,患者自身の随意的な筋活動を検出し,それに呼応して電気刺激を行うことが可能であり,より自然に近いスムーズな嚥下動作再建が期待できる.また,本装置は,刺激電極を記録電極としても兼用していることから、埋め込む電極数を半分にすることができ、埋め込み時間の短縮と、侵襲の低減化が可能である. 初年度である平成18年度は,少ないチャンネル数で効率的に喉頭挙上可能で,かつ,電極刺入可能な筋肉の選定を解剖学的に検討した,その結果,オトガイ舌骨筋,甲状舌骨筋を対象筋として選定した. 健常者2名において,電気刺激を行いながら,電極を刺入し(医師の研究協力者に依頼),電気刺激値に対し,最も効率よく収縮が発現する位置(運動点)を探索した.嚥下造影を行いながら,探索した位置において電気刺激を行い,喉頭が十分に挙上可能であることを確認した.さらに,各筋肉の運動点に刺入した電極から,正常嚥下時の筋電波形を導出できることを確認した. 筋萎縮の生じている脳卒中患者のオトガイ舌骨筋,甲状舌骨筋の筋力を増強するために,刺激波形,持続時間,極性,train数,パルス周波数等各種パラメータをPCからUSB経由で設定できる電池駆動の小型電気刺激装置を製作した.脳卒中患者2名において,10分間の電気刺激を1日に3回のペースで2週間行った.その結果,舌骨上筋群の収縮が視覚的にも認められようになり,嚥下造影検査において,舌骨位置の移動量の増大が認められた.
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