Research Abstract |
本研究では,日米都市を対象に,時空間データと地理情報システム(GIS)を活用して地区レベルの空間単位から都市内地域構造と自動車利用の関係を計量的・視覚的に分析し,交通環境負荷削減型の都市地域構造のあり方を検討することを目的としている.初年度である平成18年度は,まず(1)日米の時空間データの収集と加工,および(2)既往研究のレビューと整理を行った.日本のデータとしては,東京都市圏の国勢調査,交通センサス,パーソントリップ調査を,米国のデータとしては,ボストンとサンフランシスコ都市圏の国勢調査,国勢調査交通計画パッケージ,ゾーン間通勤時間,鉄道と駅の空間データを準備した.都市構造と交通に関する50本以上の主要な既往研究をレビューし,データベース化した.次に,準備したデータと整理した既往研究を参考に,(3)東京,ボストン,サンフランシスコの3都市に適用可能な分析手法を構築した.時空間データとGISを用いて都市内地域構造と自動車依存に関する指標を作成し,指標統計量の空間的なばらつきとその変化,都市内地域構造と自動車依存の関係とその変化を分析する手法を構築した.次に,(3)で構築した分析手法を適用し,(4)ボストンとサンフランシスコの都市内地域構造と自動車依存の関係を分析した.都市圏全体として自動車依存が極めて高いが,自動車依存度は都市内の地域によりかなりのばらつきがあった.1990年〜2000年の10年間で都市圏全体の自動車依存度はやや縮小したが,自動車依存度が拡大した地区も多く見られた.最小自乗法と空間回帰分析の結果,都市内地域構造の指標として重要なアクセシビリティ(近接性)と通勤時間に負の関係が見られ,この関係は自動車よりも公共交通に対して大きいことが分かった.次年度は東京都市圏についても分析し,系統的な国際比較を行うことを目標とする.
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