2007 Fiscal Year Annual Research Report
標高に伴う気圧変化を考慮した湿地からのメタン放出量の再評価
Project/Area Number |
18710017
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
廣田 充 University of Tsukuba, 大学院・生命環境科学研究科, 研究員 (90391151)
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Keywords | 地球温暖化 / チベット高原 / 高山生態系 / 炭素循環 / 高山湿地 |
Research Abstract |
標高に伴う大気圧の変化が生態糸に及ほす影響を評価するうえで,本研究では初年度に開発した実験システムを用いた検証とともに,実際の野外での検証が不可欠である。一昨年度(H18年度)は、大気圧を御させられる実験システムの構築に成功したので,H19年度は実際の野外での観測を行った。その際に,本研究での最終目的は「湿地からのメタン放出に及ぼす大気圧の影響」であるが,H19年度の野外観測では,開発した測定システムの検証も含めて湿地よりも観測を行ない易い二酸化炭素(CO2)を対象とし,標高3200mから4200m(大気圧:683.6haから600.5haまで)に広がるチベット高山草原で調査を行った。標高200m毎に5つの調査地を設置して,開発したチャンバーシステムを用いて生態系CO2フラックス(生態系レベルの生態系呼吸量)の観測を2008年7月下旬から8月上旬に行なった。その結果,生態系レベルの生態系呼吸量は,標高が上がり大気圧が下がるにつれて小さくなる傾向を示した。これらの結果を植物量あたりの生態系呼吸量で評価しても,同様の傾向が見られ,その主な要因が標高に伴う温度の低下であるこどが示唆された。このことは,同じ生物量であった場合でも標高が上がるにつれて(気圧が低下するにつれて)生態系レベルのCO2放出量は小さくなる傾向を示唆している。この野外での観測結果は,本研究の仮説である「標高に伴う気圧の低下が土壌中で生成されるガスの放出を促進する」という仮説とは異なった。今後は開発した実験システムを用いた検証とともに実際に湿地でのメタン放出を測定する事で大気圧がメタン放出に及ぼす影響を検証する。
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