2006 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブを活用したナノ構造物質の原子分解能電子顕微鏡観察法の展開
Project/Area Number |
18710097
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平原 佳織 大阪大学, 大学院工学研究科, 助手 (40422795)
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Keywords | 透過電子顕微鏡 / カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
ナノ構造体を孤立した状態で高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)観察するための保持材料として単層カーボンナノチューブ(SWNT)を活用し、原子分解能を実現する球面収差補正HRTEMを用いて内包物質の像観察を行った。本年度は、有機分子材料観察を見据えて従来よりも低い加速電圧(120kV)で球面収差補正装置の調整を試み、実際にフラーレン分子を一列に内包したSWNTの像観察を行い、六員環構造の炭素原子が分解できるほどの空間分解能(<0.14nm)が実現できたことを確認した。ただし、フラーレン分子の上下にはSWNTを構成するグラフェン層が重なっているが、従来のTEM像ではほぼ透明に見なせるたった二層のグラフェンでも球面収差補正TEM像では非常に強いコントラストで明瞭に観察された。これがフラーレン分子の原子配列観察の妨げになっており、単一ナノ構造体原子分解能観察のための支持体としてSWNTを活用する上で検討すべき重要な課題であることが分かった。そこで、SWNTの像のみの選択的除去を検討するために、孤立SWNTの球面収差補正HRTEM像観察を行い、その像コントラストをシミュレーション計算を相補的に用いて詳細に調べた。その結果、球面収差補正によって炭素六員環構造が明確に観察されるだけでなく、わずか1nmレベルのディフォーカス値の変化によって像コントラストが急激に変化し、条件によってはグラフェン二層のうち一層だけの六員環構造像が得られることも分かった。この結果は、HRTEM像は静電ポテンシャルの二次元投影に近似できるという従来の教科書的概念が成り立たないことを直接証明しており、電子顕微鏡学的にきわめて重要な知見である。また、球面収差補正HRTEMを用いたスルーフォーカス撮影による立体構造像観察への可能性を示唆する。この結果はNano Letters誌に報告した。今年度得た結果をもとに、今後、引き続き内包チューブの球面収差補正HRTEM像観察を行い、SWNT像コントラストの処理法を検討し、内包物質の原子構造解析手法の確立に取り組む。
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