2007 Fiscal Year Annual Research Report
和辻哲郎の倫理学・思想史研究に関する比較哲学的考察
Project/Area Number |
18720001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
飯嶋 裕治 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 助教 (80361591)
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Keywords | 哲学・倫理学 / 比較思想 / 和辻哲郎 / マルティン・ハイデガー / チャールズ・テイラー / 解釈学 / 規範性 / 電子テキスト |
Research Abstract |
研究期間の2年目にあたる平成19年度は、前年度に調査・収集した資料の本格的な読解作業を中心にして、研究計画を進展させた。 1.平成18年度においては和辻哲郎関連の資料調査を行い、国会図書館等に収蔵されている和辻の講義ノートやメモ等の資料を収集したが、今年度はこの収集資料に関する本格的な調査・読解を行った。この作業を通じては、東京大学での講義「倫理学概論」のためのノートや、『和辻哲郎全集』には未収録の論文「倫理学」などが、彼の倫理学理論の形成過程を探る上で重要な資料であるということが明らかとなってきた。 2.特に後者の論文「倫理学」は、極めて重要な資料でありながら、現在入手困難な資料であるという事情(『和辻哲郎全集』には未収録)を鑑みて、その電子テキスト化の作業を行なった。この作業に関しては、18年度に構築した電子化のためのコンピュータ環境を活用し、また作業協力者の援助も得つつ、一通り完成させた。今後、出版あるいは2年後の著作権失効を待ってウェブに公開するなど、この文献によりアクセスしやすくするための措置を講ずる予定である。 3.収集資料の詳細な調査および読解を通じて明白になってきたのは、和辻哲郎の倫理学理論の重要な特質として、それが解釈学的であるだけではなく、存在論的な議論でもあるという点が挙げられる。その点においてマルティン・ハイデガーからの影響は決定的であり、両者の思想の比較哲学的考察を行なうことを目的とする本研究の意義は、いよいよ明確になってきたと言える。和辻の解釈学的倫理学は、ハイデガーの(特に『存在と時間』で展開された)存在論を通じてこそ、よりよく理解されるはずであり、平成20年度においてはこの点を深く追究し、一定の成果を示す予定である。
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