2008 Fiscal Year Annual Research Report
占領下(1940-44年)におけるパリ市芸術局の音楽政策
Project/Area Number |
18720026
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田崎 直美 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 研究員 (70401594)
|
Keywords | 音楽 / 文化 / 政策 / フランス / パリ / 占領 / 20世紀 / 第二次世界大戦 |
Research Abstract |
本研究の目的は、占領下(1940-44年)という特殊な状況にて、パリ市芸術総監本部(パリ市芸術局)Inspection generale des Beaux-Arts de la Ville de Paris(IGBA)が担当した音楽政策内容について史料調査をすることで、知られていなかった実態を解明すると同時に、当時の政策の歴史的、社会的意義について考察することを目的とする。 1. 「音楽コンクール」(1876-1942)の意義の考察 IGBAが主催した音楽政策で唯一第三共和政期からの連続性を持つ「音楽コンクールConcours musical」について、本年度は戦前戦後に及ぶ追加史料調査を行い、1) パリ解放後の実態、2) 政府とパリ市の関係、3) 審査員、コンクール参加者および参加作品に関する情報収集、4) 音楽批評の分析、を行った。その結果、第三共和政時代より、市議会議員が音楽政策全般に対して強い発言力をもったこと、当時の音楽家と議会議員の間には絶えず対立関係や協力関係が生まれていたこと、そして本制度は戦後も大枠を維持したまま継承されたこと、が判明した。昨年度の結果と併せ考えると、占領下パリにおける「音楽コンクール」は、第三共和政期以降のフランス文化政策における普遍的要素を含んだ政策であった、とみなすことができるのである。 2. 占領下IGBA音楽政策の、歴史的意義の考察 占領下IGBAが行った音楽政策は、演奏会事業であれコンクールであれ、「創出された伝統」であり、政策担当者たちが正統化しようとする「国家」のシンボル確立に貢献しようとしたと解釈できる。こうした動きはすでに第三共和政時代から用意されており、1) 政治家および「公認」人物による芸術の管理という考え方、2) フランス(国家)とパリ(首都)の両義的関係、が背景と考えられる。しかし、こうした政策が当時の人々の支持を必ずしも得ていなかった点は特徴である。
|
Research Products
(2 results)