2006 Fiscal Year Annual Research Report
バーク崇高美学の形成とアイルランド精神文化との連関をさぐるフィールドワーク的研究
Project/Area Number |
18720028
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
桑島 秀樹 広島大学, 大学院総合科学研究科, 助教授 (30379896)
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Keywords | 崇高 / バーク / 美学・芸術学 / アイルランド / イギリス / 18世紀 / クエーカー / シャクルトン |
Research Abstract |
本研究課題は、研究代表者によるこれまでのエドマンド・バークおよび崇高研究の一環に位置づけられる。美学醸成期の初期バークにかんする詳細な調査はまだ完成をみていない。また、18世紀環境にかんする研究文献の収集・整理もまだ過渡的段階にある。したがって、研究課題の遂行初年度は、以下3つの研究視覚からのアプローチに努めた。(1)18世紀アイルランド文化にかかわる文献・映像資料の収集、(2)バーク崇高論の要点整理と現代的意義の確認、(3)実地による初期バーク伝記調査(2001年10-11月、2002年5月、2004年12月に続く調査)。 (1)については、洋書を中心にレファランスや稀少文献を渉猟した。在外調査先での図書館・博物館・美術館での郷土史的資料の収集(文書複写・写真撮影)もここに含まれる。 (2)にかんして特質すべきは、論考「現代崇高事情」(『英詩評論』)と事典項目「崇高」(近刊『イギリス哲学思想事典』)の執筆である。ここでは、バーク以前の崇高論史、近代的美術範疇論の嚆矢としてのバーク、現代的崇高論の多様化とバークの意義を概括した。崇高が、前衛芸術ばかりでなく、政治哲学や歴史表象の領域でも喫緊の課題であることも指摘している。なお、こうしたアクチュアルな崇高概念は、日本イギリス哲学会やイギリス思想主義研究会での小田川大典氏(岡山大学法学部)との情報交換でいっそう深化するに至っている(小田川(崇高と政治理論)」『政治学の新潮流』木鐸社、2007年3月参照)。 (3)については、平成19年3月14〜22日におこなったイギリス調査を挙げたい。この渡英では、特に以下2つの視座のもと調査をおこなった。(a)バークの居住地も含む、17・18世紀ロンドンのアイルランド人居住地の確認および生活・文化環境の踏査(St.Giles, Spitalfield, Kockfergus地区)、(b)バークの通った愛バリトア寄宿学校(中高一貫クエーカー学校)の創設者A・シャクルトンに、教育モデルを提供した英スキップトンのクエーカー学校(David Hall創設)とその背景たる18世紀ヨークシャー南部クエーカー共同体の精神風土の調査。この実地調査にあたり、ロンドンでは、St.Giles Church, Tate Britain, British Museum, London Metropolitan Archives, Royal Society of Artsなどスキップトンでは、Quaker Meeting House, Skipton Libraryなどの機関・施設に訪問または問合せをおこない、貴重な図版・画像資料、地域文化史的な文献資料などを得た。
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