2008 Fiscal Year Annual Research Report
バーク崇高美学とアイルランド精神文化との連関をさぐるフィールドワーク的研究
Project/Area Number |
18720028
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
桑島 秀樹 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (30379896)
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Keywords | 崇高 / エドマンド・バーク / 美学・芸術学 / アイルランド : イギリス / 18世紀 / クエーカー / ジェムズ・バリー / ブリストル |
Research Abstract |
平成20年度は本研究課題遂行の最終年度。現地調査としては、ロンドン・バーク居住地(特にアイリッシュ、ユグノー、クエーカー等18世紀少数派居住地)調査を2009年1月に敢行。これにより、バークの渡英初期(1750年代前半)から文壇登場、政界登場(1760年代半ば)を経ての生活空間が、西郊への首都街区拡大に連動して変化したことが分かった。当時の「移民少数派」にも、バークのような階層上昇成功者と失敗者があったことも鮮明化。なお本年度調査では、大英博物館蔵「バーク・サーヴィス」(1770年代、議員当選記念陶磁器一式)の更なる分析も進んだ。この陶磁器は、ブリストルの陶磁器製造業者でクエーカーのR・チャンピオンの手になる。彼は北米やアイルランドとの自由貿易推進派で、思想的支柱としてバークを招請。その陶磁器図案にも、妻や前任者への軽口とともに、植民地貿易の「自由」の象徴としでバークが描かれている(『広島芸術来学会会報』第102号,2009年4月25日. p. 3掲載 : 3月中入稿・掲載決定)。大英博物館学芸員Ailean Dawson氏の協力で陶器実物も検証でき、18世紀ブリストル陶器関連情報も得られた。過去3ヵ年の調査資料は現段階では整理中のものが多い(継続的収集・調査も必要)。しかし本年度は従来の「バーク」「崇高」研究の集大成たる単著『崇高の美学』(講談社メチエ, 2008年5月)を上梓した。2009年1月より誠信書房『誠信プレビュー』誌に、現地調査に拠る連続エッセイ「<崇高>の聖地-愛蘭土紀行」を執筆中(連続3回)。さらに、アイルランド・コーク市立クロウフォード美術館調査(2008年3月)に基づく、18世代画家J・バリー(バークが庇護者)にかんする論考も公表予定(『日本アイルランド協会会報』第73号,2009年4月30日, p. 7掲載予定 : 3月中入稿・掲載決定)。
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