2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18720042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉野 朋美 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 助手 (60401163)
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Keywords | 源俊頼 / 後鳥羽院 / 俊頼影供 / 散木奇歌集 / 俊頼髄脳 / 後鳥羽院御集 |
Research Abstract |
本年度の研究実績としては、まず後鳥羽院の源俊頼享受の一端として、隠岐で藤原家隆と催した俊頼影供について、小文ながら活字化したことを挙げたい。この影供は、影供歌合史上でもその特異性が注目される催しだが、小論ではその開催意図について考察した。この催しは後鳥羽院が還京運動に連動して詠んだ「詠五百首和歌」と関連するのではないかということ、俊頼を影供の対象としたのは、後鳥羽院が五百首で『堀河百首』詠を多くふまえたのを契機として、同百首の中心的存在である俊頼の和歌の徳を鎭仰し、かつ供養するために影供を催すことを考えたからではないか、その際には『柿本講式』の記述が参考になるのではないかということを述べたものである。この催しに関しては、周辺資料に恵まれず跡づけてゆくのが難しい面もあるが、今後も丹念に探ってゆく予定である。 本文を確定しながらの『散木奇歌集』の全訳注も進め、今年度は夏歌の途中までおこなったが、俊頼詠には難解な歌、語彙から問題になる歌、注釈の付けにくい歌等々があり、訳注を付すには時間のかかることがあらためて実感された。後鳥羽院の俊頼享受の実相についても検討を続けている。 『俊頼髄脳』の電子情報化については、本年度は国立国会図書館蔵本を底本とする新編日本古典文学全集(小学館)をテキストデータ化したので、関連の研究をおこなっている研究者に配布したいと考えている。 また、本研究に関連する実績として、『俊頼髄脳』に所収の説を引用した、室町時代の亡母追善供養法会の次第を記した古写本を披見し検討する機会を得、論文化したことを挙げたい。この考察によって、俊頼の和歌事績はこのように和歌のジャンルに留まらない享受もなされており、後世にいかに影響が大きかったか、その一端が垣間見られたからである。
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Research Products
(2 results)