2007 Fiscal Year Annual Research Report
リヒテンベルクとホガースの間メディア性についての研究
Project/Area Number |
18720069
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
濱中 春 Hosei University, 社会学部, 准教授 (00294356)
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Keywords | 独文学 / 美術史 / 間メディア性 / リヒテンベルク / ホガース / 顔 / イメージと言語 / 観相学 |
Research Abstract |
本年度は、リヒテンベルクの『ホガース銅版画詳解』における顔をめぐる解説について考察した。観相学を顔というイメージを言語を用いて解釈するいとなみととらえれば、リヒテンベルクのホガース解説における観相学的実践には、絵画の解釈である彼のホガース解説全体のあり方が縮約されていると言える。ラーファーターが顔というイメージの解釈をその意味を「命名」するという言語化のモデルでとらえ、原理的にはあらゆる顔の意味は言語に還元可能であるとみなしているのに対して、リヒテンベルクはイメージと言語という表現媒体の相違を認めている。だが、それにもかかわらず顔、そして絵画を言語によって解釈することを断念しないリヒテンベルクのテクストを手がかりとして、言語とイメージの関係という問題に取り組んだ。 ラーファーターの観相学とは異なり、リヒテンベルクはホガースの絵の中の顔について、それが表す性格や感情といった意味だけではなく、肖像の同定と顔の認識という観点からもアプローチしており、さらにそれらの否定性、つまり、顔の無意味さ、同定不可能性および認識不可能性という問題も取り上げている。このように多角的・重層的な顔へのアプローチからは、顔というイメージの意味の言語化不可能性、イメージの特性としての「語る」のではなく「示す」力、イメージの潜在性が明らかになる。これらはいずれも現代の美術史学において、言語に還元できないイメージ固有の意味産出方法を探求する手がかりとされている現象だが、本研究においては、それらがリヒテンベルクのテクストの分析、とりわけ翻訳、モダリティ、プロセスの記述といった言語の遂行性を通して明らかになったことを強調したい。イメージを解釈する言語の分析は、イメージおよび言語の意味生成構造を解明する手がかりとなり得るのである。
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Research Products
(3 results)