2007 Fiscal Year Annual Research Report
音楽と文学の境界問題として見るローベルト・シューマンの音楽とその音楽観
Project/Area Number |
18720076
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 英 Waseda University, 文学学術院, 助手 (10409592)
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Keywords | 芸術諸学 / 音楽学 / 独文学 / ローベルト・シューマン |
Research Abstract |
・ローベルト・シューマンに関する一次文献に加え、研究の過程で必要が生じた2次文献についてもデジタル文書化を進めた。目下はPDF形式での保存がメインで、OCRを活用した作業は遅れ気味だが、少なくとも一次文献に関しては、ワード形式ないしテキスト形式への変換作業を早急に完了させるようにしたいと考えている。 ・当初の計画通り、今年度はシューマンの『楽園とペリ』に関する研究を行った。作品の成立の過程、作品の受容史、音楽の特徴について、先行研究を手掛かりに研究を進めると同時に、シューマン自身が独自性を認めていた通作様式に関する考察を、彼の音楽観と当時の音楽の傾向を踏まえながら行った。とりわけ通作様式の考察により、彼においてはオラトリオとオペラという両ジャンルの理解が、極めて接近した状態でなされていたことを示すことができた。これは、彼においてジャンルの越境が行われてゆく過程を今後探って行く際、重要な手掛かりとなるように思われる。 ・シューマンの歌曲に関する研究は、資料収集と同時に、作品の成立史に関する再検討を開始したところである。彼の音楽観において歌曲がどのような位置を占めるかについては、次年度の課題としたい。 ・『楽園とペリ』に関する研究の過程でシューマンの文学の嗜好について調査をする必要性が生じた。この際、先行研究において示されている読書記録とともに、彼の未完オペラにも目を向けた。未完オペラについての調査は、昨年度の研究実績を土台に行われた。それゆえ、彼がオペラの作曲の過程において一貫して台本の詩心を重視していたことを指摘する論文も、比較的短期間のうちに仕上げることができた。この成果は、シューマンにおける文学と音楽の関係を考察するための一助となった。
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