Research Abstract |
ポライトネス・ストラテジーを構成する要因として,(1)「社会的距離」,(2)「相対的力」,(3)「文化の差」,(4)「相手の性」の4つを尺度化し、丁寧度の判定に関わるポライトネス・ストラテジーの要因について階層的分析を行った(決定木分析)。分析の結果は,次の5つに要約することができる.第1に,言葉使い全体の丁寧度は,雑談の場面よりも依頼の場面のほうが高い.これは,ポライトネス理論からすると,「相手のフェイスを脅かす度合い」はおそらく雑談の場面より依頼の場面で高くなるからだと解釈できよう.第2に,「社会的距離」の要因が4つのなかで最も優先され,「親」と「疎・外」とで丁寧度のパターンに有意な違いが見られた.丁寧度は,両場面とも「親」の相手よりも「疎・外」の相手に対してより高くなっていた.第3に,「相対的力」が次に強い要因となったが,丁寧度のパターンは,雑談と依頼の場面で若干異なっていた.雑談の場面では「親」と「疎・外」のそれぞれについて「目上1」「目上2」「同等」「目下」の4つに分かれているのに対し,依頼の場面では「親」と「疎・外」のそれぞれについて「目上1」「目上2」「同等・目下」の3つに分かれた.つまり,依頼の場面では,同等の関係と年下の相手に対しては同じ丁寧度で接していることがうかがえる.第4に,日韓の「文化の差」の要因は,依頼の場面では,日韓の違いが「杜会的距離」から「相対的力」の下位要因として一貫して影響していた.一方,雑談の場面では,「相対的力」によって日韓と相手の性の影響関係が異なっていた.第5に,同性か異性かという相手の性は,依頼の場面では,「文化の差」の下位要因となっていた.つまり,条件によって日韓に違いがあり,さらに相手の性が影響するという関係である.しかし,雑談の場面では,日韓の差と相手の性はやや複雑な影響関係となっている。
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