2008 Fiscal Year Annual Research Report
明清期における礼学と「社会における礼教の普及」に関する研究
Project/Area Number |
18720191
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
佐々木 愛 Shimane University, 法文学部, 准教授 (00362905)
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Keywords | 中国史 / 中国哲学 / 中国法 |
Research Abstract |
本年度は研究期間最終年度にあたり「近世中国社会における礼教の普及」という「通説」に対する検証という性格をもつ研究を実施した。礼学研究としては丘濬『家礼儀節』に関する研究を行った。従来丘濬『家礼儀節』は朱熹『家礼』の精神を継承し、ただ器物等の点でより実践しやすく改変したものとみなされてきた。しかし本論文は、丘濬本では朱熹『家礼』の根幹精神を骨抜きにしていることを明らかにしすることで、朱熹『家礼』は成立後そのまま社会に普及していったわけではないこと、そして礼意の普及が教化を意味していないこと等を明かにした。本研究は「社会における礼教の普及」という「通説」に修正を迫ったという点で意義と重要性を持つ。 また、礼教の普及という問題については、法(刑罰)とその施行という観点からの研究が必要であるとの見地から、法と礼に関する研究も進めた。以前から継続している名公書判清明集訳註作業の一旦を公にした(『名公書判清明集(官吏門)訳註稿・上』)ほか、明清律・殺死姦夫律に関して研究を進め、国際学会での研究発表や論考を発表した。従来、殺死姦夫律は、姦通を犯した妻を殺害する権利を夫に付与したものと理解されていた。しかし上記所論考では、このような従来の理解では法と国制が反することを指摘、本律が存在しているのは、中国法というものが個々の悪行を分類し個別ケースごとに刑罰を設定するという性格に由来すること、そして本律は適用条件が厳しく守られ、実際にはほとんど適用できなかったことを指摘し、国制と法とが一体となって礼教化を進める体制にはなかったことを明かにした。本研究は、礼教化という問題を、国制と法という視角から考察し、そして「社会における礼教の普及」という通説に修正を迫ったという点で意義と重要性を持つ。
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Research Products
(5 results)