2007 Fiscal Year Annual Research Report
トランス・ナショナル史の視点からみるアメリカ型福祉国家体制の起源
Project/Area Number |
18720201
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
松原 宏之 Yokohama National University, 教育人間科学部, 准教授 (00334615)
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Keywords | 福祉国家 / ジェンダー / トランスナショナル史 / 政治文化 / 共和主義 / ニュージーランド / 労働運動 / 女性参政権運動 |
Research Abstract |
1930年代に成立するとされるアメリカ型福祉国家体制の起源を、1910年代から20年代にさかのぼって国際(トランス・ナショナル)史の観点から検討するプロジェクトの二年度目。ニュージーランドにおける動向をつかみきれないものの、手がかりは増えてきたと言える。 アメリカ合衆国が福祉国家への道をたどりはじめる端緒を、1890年代から第一次世界大戦頃までの社会改良運動の時代に認めることができる。いわゆる革新主義期であり、社会政策への具体的提言の登場がとりわけ注目される。さて、こうした動きの第一波を担ったひとりであるHenry Demarest Lloydが、アメリカにおける取り組みに参考になるものとしてニュージーランド事情を盛んに伝えている。ニュージーランドに乗り込んでの視察とその報告記を含めて、熱心な紹介である。呼応するように、アメリカにおけるニュージーランドへの関心の高まりを雑誌・新聞での取り上げから確認できる。なかでも、労働運動と女性参政権運動とは脚光を浴びているようで、言及が多い。単なる参考である以上に、18世紀末の建国期には世界最先端の政体であるのを誇示したアメリカが、19世紀末に入ってその世界史的位置についての不安とともに実験国家ニュージーランドを見ている様子。国内的社会政策がこうした国際的な思想空間で構想されるのが興味深い。 ただし、こうした関心がどの程度持続したのかが今のところはっきりしない。継続調査を要する。
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