2007 Fiscal Year Annual Research Report
ニヴフ民族の口承文学資料の再検討と生活史における位置づけの研究
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18720240
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
丹菊 逸治 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (80397009)
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Keywords | ニヴフ(ギリヤーク) / 民族学 / 口承文学 / 文化人類学 / 生活史 / 少数民族 / サハリン / 昔話 |
Research Abstract |
予定通り服部健採録資料の分析を行った。2回予定していた海外調査は1回に集中して行った。過去に記録されたニヴフ民族の口承文学資料を見直し、生活史の中に位置づけるための聞き取り調査、および筆記資料原文の分析をロシア連邦ハバロフスク州、同サハリン州において2007年2月18日〜3月14日の日程で行った。ハバロフスク州アムール地方北部、アムール川流域における調査では、物語資料のみならず、歌謡資料に関しても従来得られなかった情報が多く得られた。また、ソビエト政権下におけるのニヴフ語使用状態、口承文学の継承状態に関する情報が得られた。これらは生活史との関わりについての直接的な情報である。同時に将来のニヴフ文化研究全般に寄与し得る重要な資料である。現地在住の研究者との情報交換も行った。 サハリン州では南部ユジノサハリンスク周辺において、ピウスツキによる筆録資料の一部についてニヴフ語原文解読を行い、語り手とテクストの関係について新たな分析結果を得た。北部ノグリキにおいてはソビエト政権下の集落における生活、口承文学の継承状態に関する情報が得られた。これは本研究課題に直接関わる。近年、ニヴフ民族自身が「民族の記憶」として口承文学の価値を最評価し始めているが、その動向についても情報が得られた。本研究はそういった民族主義的な運動とは異なるが、生活史資料、生活史との関わりの反映として見る点では共通の部分がある。 ミクロな視点では個人の生活史と口承文学の関わり、さらにマクロな視点では20世紀初頭から21世紀にかけてのおよそ百年間で、その関わりがどう変化してきたか、という見取り図を描くための資料が得られたことは有意義である。知識・経験知の蓄積、芸能としての口承文学には個人差が大きい。一方で共同体の近代化と同時に、娯楽としての歌謡ジャンルの後退、物語ジャンルの変容などがみられる。
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Research Products
(2 results)