2006 Fiscal Year Annual Research Report
自主規制の公法理論及び制度設計論に関する比較・実証研究
Project/Area Number |
18730021
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 大樹 九州大学, 大学院・法学研究院, 助教授 (90404029)
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Keywords | 公法学 / 自主規制 / 制度設計 / 行政法学 / 政策法学 / 環境法 / 情報法 / 経済法 |
Research Abstract |
今年度の研究実績は,大きく以下の2点にまとめられる。 第1は,アメリカ及びドイツとの比較法研究を踏まえ,自主規制の制度設計の際に分野を超えて考慮すべき一般的な原則を明らかにしたことである。国際自主規制などの一部を除き,自主規制が文字通り「自主」的に作動していることはなく,そのほとんどは国家が政策目的の実現のために利用している性格を持つ。このことを前提とすると,自主規制が用いられる際には,被規制者の権利・自由が不当に侵害されないようにすること,自主規制内容の決定や執行にあたり,直接的・間接的に影響を受ける第三者への配慮が求められること,自主規制の有効性・効率性が確保されるシステムを構想することが必要となる。次年度はこの成果を前提にして,より具体性の高い制度設計論を構築したいと考えている。 第2は,自主規制論が公法理論に対して与えうるインパクトを,主として以下の3つの観点から提示したことである。1つは,いわゆる公法と私法の交錯領域において,公法理論を段階的に及ぼすための理論枠組の検討である。従来から注目されてきた権力的権限の授権のみならず,行政契約の利用や立法者の規律責務の観点も含め,多元的な対応方法を視野におさめる必要がある。2つは,公法学における団体の位置づけである。団体の存在とその機能を一旦認めた上で,公法学の重視する指針的価値の観点から,組織・作用・訴訟法に関して,その規範論を構築しなければならない。3つは,行政法学上の基礎的な概念の見直し作業である。とりわけ「規制」の定義の中に「誘導」論がもたらした成果を含めることにより,規制のための法技術の蓄積の場として行政法学を再定位することが可能となる。 以上の研究成果を,『自主規制の公法学的研究』と題する著書によって公開した。
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Research Products
(1 results)