2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18730092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増原 綾子 東京大学, 社会科学研究所, 研究支援推進員 (70422425)
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Keywords | 比較政治 / インドネシア政治 / 個人支配 / 政治的移行 / 民主化 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は、年度末に提出した博士論文の完成に集約される。前年度までの研究の継続として、インドネシア・スハルト体制下の翼賛的な与党ゴルカルに焦点を当て、ゴルカル内部の変化とそれによって体制の内部で進行していた政治的なダイナミズムに関する研究を行ってきた。今年度は、この政治的ダイナミズムが1998年5月のインドネシア政変とスハルト大統領の退陣にどのように結びついたのか、その具体的な政治過程に分析の焦点を絞って研究を行った。このような研究目的に基づいて、8月19日から9月4日までインドネシアに滞在し、必要な資料の収集(とくに新聞データと政治家・軍人の回顧録)およびインタビューを行いつつ、博士論文の執筆作業を継続して行った。 その結果として、次のことが明らかとなった。第一に、1980年代半ば以降ゴルカルにリクルートされたさまざまな社会団体出身の国会議院が、1998年5月の政変の際に改革勢力との対話と連携の核となったこと。第二に、このグループが改革勢力との間で「立法府のエンパワーメントによる制度構築」という合意を形成し、この合意に基づいて選挙制度改革や議会制度改革、大統領権限の抑圧等の改革アジェンダを設定したこと。第三に、このような制度改革を実行していくためには、スハルトによる個人支配の排除こそが必要であるという共通認識が生まれ、ここの「スハルト大統領の即時辞任」という合意形成が与党ゴルカルを中心とする議会と改革勢力との間で成立し、国会による大統領辞任勧告へとつながったことである。 このような研究の成果を盛り込み、博士論文を書き上げ、『スハルト体制下における与党ゴルカルの変容とインドネシアの政治変動---翼賛型個人支配とその政治的移行---』との題名で、東京大学大学院総合文化研究科に提出した。
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Research Products
(1 results)